岸田降ろしと参院選大敗を経て自民が野党転落も 自民党はリクルート事件以来の難局に直面

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首相の思惑とは異なり、自民党内の最大の関心事は、総裁選の行方ではなく、2025年10月に任期満了を迎える衆議院議員の次期総選挙と2025年夏の次期参院選で、有権者が自民党にどんな鉄槌を下すかだ。

政党が存亡の瀬戸際に立たされたときに「解党的出直し」の必要が叫ばれるが、今はその局面である。一刻も早く解党的出直しに着手し、国民の信頼を回復しなければ、1993年と2009年の野党転落の再現も、という懸念が高まっている。

向こう1カ月で変身できるか

解党的出直しの第1は、派閥政治打破である。最大派閥の安倍派は壊滅状態だが、主流3派も含めて、岸田首相が自ら全党で実質的な派閥解消を断行できるかどうか。

第2は、「官僚依存」や「派閥重視」の姿勢ではない新型のリーダーをトップに擁する必要がある。国民に向かって、達成目標や挑戦のシナリオを明示して、それを支持する民意の幅広い同意と共感を背に、命懸けで取り組む指導者が求められるが、対極のタイプの岸田首相が民意結託型に変身を遂げることができるか否か。

2つの条件の成否が政権の命運を左右する。ノーなら、新年早々にも早期交代論が噴き出すに違いない。連動して、党内で「岸田降ろし」が顕在化する展開も予想される。

残念ながら、2023年末の時点で、岸田首相からは、派閥政治打破や民意結託政治への転換の気配はうかがえない。「鈍感力」も一つの武器だが、国民も自民党内の空気も、自民党の再生・出直しに時間的な余裕があるとは思っていない。2024年1月の通常国会開幕までの向こう約1カ月がトライのぎりぎりの期間である。

35年前と同じ流れなら、2024年は首相交代、2025年の参院選は与党過半数割れ、次に自民党野党転落という場面も起こりうる。岸田首相は歴史から何を学んでいるかが問われる。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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