路面電車でも深刻化「運転士不足」処方箋あるのか 入社して免許取得後に同業に転職する事例も

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路面電車の運行を行う各事業者は、人員確保のための対策を講じている。その中でも変わった試みをするのが、岡山県岡山市の市街地を走る岡山電気軌道。同社が2023年11月7日に発表した内容を見ると、「路面電車運転士の運転体験会(採用説明会)」とある。「運転体験会」といえば、小さな子どもたちを含めた鉄道ファン向けの地域貢献を目的とした楽しいイベントと考えられるが、「採用説明会」と付け加えられると、その目的はまったく異なるものになる。

内容は採用説明会と運転体験会がセットで行われ、その後希望者を対象に「適性検査」が行われる。訓練は、各事業者で行われることがほとんどだが、教習なども長い時間をかけて行われる。たとえばとさでん交通では、「採用後は免許を取得後、教育期間を終了し、約6カ月後に電車運転士として独り立ちとなる」。

外国人の雇用にも難点がある

運転士不足の解消策としては今後は法律の改正などによって、外国人労働者の雇用や自動運転技術の向上なども考えられているが、外国人を運転士として雇用する場合は、日本の交通事情による「安全に対する考え方」という基本の部分から教育していかなければならないし、自動運転に対しても、技術はもとより、利用者に対して信頼を得るという繊細な部分も築いていかなければならない。どちらも軌道に乗るまでには時間がかかりそうだ。

とはいえ、公共交通は、人々が生活していく上での欠かせないインフラである。今後もあらゆる方法を駆使して、人員の確保を目指し、公共交通を守っていく必要がある。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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