日本の自動車産業を左右するダイハツの失地回復 過去の自動車業界の不祥事との比較から読み解く
経営破綻には至らないまでも、長期にわたって信頼を失い、経営悪化を続けたのが三菱自動車である。2000年のリコール隠しの発覚以来、同社の経営改革は進まず、その後も相次いで不祥事が発覚し、業績は低迷を続けた。なお、2023年12月現在においても、同社の株価はリコール隠し発覚前に遠く及ばない。
一方で、業績が回復しているのが、独フォルクスワーゲンである。2015年にディーゼル車の排ガス検査で不正を働いていたことが発覚した。同社の信頼は失墜し、欧米を中心に販売にも大きく影響した。
その後、CEOに就任したマティアス・ミュラー氏は組織改革を断行し、翌年の2016年には黒字へ回復。後任のヘルベルト・ディース氏は、さらにグループの大規模な事業の再編を実施。電気自動車(EV)の積極的な導入も進めた。業績はその後も好調に推移している。
このように同じ業界の不正といっても、問題の深刻さの度合い、および企業の事後の対応の適切さによって、明暗は大きく分かれている。
ダイハツはこれからどうなるのか?
第三者委員会の報告によると、今回のダイハツの不正は174件に及び、最も古い不正は1989年にまでさかのぼるという。
日本の自動車業界の不祥事としては、前代未聞の規模といえ、再発防止と信頼回復までは、長い道のりになることが予想される。
しかしながら、タカタなどとの大きな相違点もある。
タカタや三菱自動車の事件では、死傷者が出ていることも、問題を深刻化させた。今回は、大規模な事故を発生させるレベルの不正には至っていないように見える。
長期にわたる大規模不正を現経営陣が把握していなかったこと、長らく是正されていなかったことは大きな問題ではあるが、知っていて故意に行っていたというのとは事態の深刻さは異なっている。
また、ダイハツの親会社のトヨタ自動車は日本のトップ企業であるだけでなく、世界的企業である。本問題に対して徹底した対応が求められているし、またその覚悟も持っているように見える。事後対応も適正に行われることが期待される。
今回の不正によるダイハツのビジネス面でのダメージ、信頼性、ブランドの失墜は著しいが、今後の対応を適正に行うことで、信頼回復、また業績回復は不可能とはいえない。
2017年、自動車業界だけでなく、東芝の粉飾決算、神戸製鋼データ改ざんなどの不正行為が相次いで、日本の製造業の信頼性を損なう結果になってしまった。
ダイハツだけでなく、自動車業界全体が今回の不正に真摯に向き合い、再発防止を徹底する必要がある。日本の基幹産業である自動車産業の信頼性を守ることは、日本の信頼性の確保にもつながる、重要な課題である。
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