急性膵炎の治療では特に痛みのコントロールが重要で、順調に経過すれば1〜2週間で退院できることが多い。
しかし、入院がそれ以上に長引くケースもある。急性膵炎が恐ろしいのは、患者の20%で重症化してしまうことだ。その場合、1〜2カ月の入院が必要になる。
重症の急性膵炎とは、肝臓や腎臓などの臓器が機能不全となったもの、敗血症など重症の感染症を併発してしまったものをいう。
「命にかかわるリスクが高く、輸液管理や栄養管理、臓器不全対策、感染予防などの治療が必要。集中治療室で治療することもめずらしくありません。さらに重症急性膵炎の後、壊死した膵臓に感染が起こってしまうと、内視鏡を用いた治療や手術が必要となることもあります」(正宗さん)
前述した全国疫学調査では、2011年には10.1%だった重症急性膵炎の致命率が、2016年には6.1%にまで下がっている。「これは初期治療が奏功している結果と考えられます。ただ、発症2週間以降の致命率は改善しておらず、今後の課題です」と正宗さんは話す。
「一度にたくさん」飲酒がリスク
では、急性膵炎を予防するには、どうしたらいいのだろうか。
まずは、お酒を飲み過ぎないことが大切といえそうだ。昔、お酒は『百薬の長』といわれていたが、今では少量でも、膵炎に限らず、さまざまな病気の引き金になることがわかっている。
でも、実際のところ、「まったくお酒を飲まないのは難しい」という人もいるだろう。
「お酒を飲み過ぎたからといって、必ずしも急性膵炎になるわけではありません。しかし、節度のある飲酒を心がける必要があります。1日当たり純アルコール40g以上の摂取で、急性膵炎の発症リスクが3倍以上になるとされています。また、たまにお酒を飲む人が一度に大量に飲んだ場合も、急性膵炎を発症するリスクは上がるので気をつけてください」(正宗さん)
女性やアルコールを分解する代謝酵素の働きが弱い人は、1日に純アルコール20g程度でもリスクがあるともいわれている。より少ない量でも注意が必要だ。
暴飲だけでなく、暴食にも要注意だ。中性脂肪の値が高くなると、大量の遊離脂肪酸が膵臓の毛細血管や細胞にダメージを与えるため、急性膵炎になるリスクが高まる。喫煙もリスク因子の1つで、禁煙が勧められる。
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