住民の「困った」が議員を動かす、政策DXの革新性 スマホで気軽に議員と交流、無党派層取り込む

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元山区議の言う「普段は絶対に遭遇しない層」とは、イシューズのメインユーザーである無党派層や、20~40代のことだ。「現在の社会は、彼らの声を吸い上げることが構造的に難しい」と株式会社issuesの廣田達宣・代表取締役(35)は指摘する。

イシューズの廣田達宣代表は2度目の起業で「政策DX」を選んだ(提供:イシューズ)

廣田氏は慶応大学在学中に児童・学生向けの学習補助アプリで起業。後に大手予備校の駿台グループへ売却した。ほかにも病児保育などを手がけるNPO法人フローレンスで、ふるさと納税を用いて貧困家庭の子供へ定期的に食事を届ける「こども宅食」を立ち上げた経験を持つ。

2度目の起業のきっかけは、2016年2月にウェブ上に投稿された匿名のブログ記事だった。「保育園落ちた日本死ね!!!」と題され、子育てと仕事を両立できない状況を訴えた内容は話題を呼び、国会でも取り上げられた。

この記事を読んだ時、廣田氏は妻にプロポーズする1カ月前だったという。「未来の自分たち夫婦もこうなると直感しました。同じ状況の人々の課題を解決したいと、何か事業を始めることに決めました」(廣田氏)。

「中間組織」の代替ツールに

アイデアを練っていたある日、受動喫煙の防止条例への賛成を地元議員に呼びかけよう、という趣旨の投稿をSNS上で見つけた。賛意を示す「いいね!」は約500件あったが、実行したとコメントを残していたのは1人だけ。「課題があっても、市民はどこに伝えて良いのか分からず、結果的に放置されるのでは」と仮説を立てた。

かつての日本社会では、町内会や自治会、労働組合といった市民組織の構成率が高かった。集まって顔を合わせ、生活上の困りごとを話し合っているうちに、課題は地域の共通意識に。こうした組織は集票力の観点から議員と距離が近く、要望を直接伝えられた。また、自らが主体となって自治体などへ働きかける力もあった。組織がいわば、住民と政治をつなぐ中継役を担っていたのだ。

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