中国版インスタグラムと呼ばれるSNSの「小紅書」には、SAPIXの成績優秀者表彰状と成績表が数多く投稿されていて、総合100位以内の生徒もちらほらいる。
中には総合成績で「6729人中2位」の生徒もいる。保護者の母語が日本語ではないことを考えれば、驚くべき成績である。
日本に住む中国人は増加する一方だ。今年6月末時点で、在留中国人は約79万人にまで増加し、日本で最大の外国人コミュニティを形成している。その子女が中学受験に殺到する背景としては、1990年代以降に増加した中国人留学生が家族を形成し、その子どもが受験期に入ってきたことが挙げられる。
長女はSAPIXに通わせることに成功
1990年代末に来日した黄さんもその一人だ。出身は日本と歴史的な結びつきの強い東北地方の遼寧省だ。同じく日本に留学に来ていた河南省出身の男性と結婚した。
黄さんには苦い記憶がある。いまは高校生になっている長男が小学校時代にSAPIXの入塾試験に不合格だったのだ。小学校高学年ともなると入塾テストの難易度が上がり、SAPIXには入りにくいということを知らなかったためだ。
そのため長女には小1から公文に通わせたうえで、小4から小6にかけてSAPIXに通わせることに成功。それだけにとどまらず、小5で個別指導、小6で受験ドクターを利用するなど、全部で600万円を「課金」するほどの熱の入れようだった。おかげで今年春、いま人気が急上昇している神奈川の私立中高一貫校に無事合格した。
黄さんには、息子と娘を連れて中国に帰国していた時期もあった。しかし中国の教育環境についていけず、3年ほどで日本に戻ることにした。
黄さんは「中国では学校の内部に人脈がないと、何事もうまくいかないんです。つねにアンテナをはって注意しておかないと、詐欺にあったり、人間関係で思わぬミスを犯したりします」という。中国の厳しいコロナ対策を日本から眺めていて、ますます中国での子育てはありえないと考えるようになった。
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