スルガ銀、「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題

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シェアハウス融資が解決を見た一方、1棟アパート・マンション融資はいまだ尾を引いている(撮影:今井康一)

「シェアハウス以外の投資用不動産向け融資についての当社対応状況」。11月22日、スルガ銀行がこんな表題のプレスリリースを公表した。シェアハウス以外の投資用不動産、とは1棟アパート・マンション(アパマン)を指す。

今年4月以降、スルガ銀はアパマンオーナーが結成した弁護団との交渉状況を開示しており、今回が2度目の公表となる。

弁護団側は計864物件のアパマン融資について、「書類改ざんなどの不正行為によって、オーナーが高値づかみをさせられた」と主張。元本カットを求めて、スルガ銀と交渉を続けている。

2018年の発覚以来、投資用不動産をめぐる不正融資に揺れてきたスルガ銀。2022年にシェアハウス「かぼちゃの馬車」の問題が終局した一方、いまだ懸案となっているのがアパマン融資だ。スルガ銀は早期解決に向け落としどころを探るも、弁護団との溝はなかなか埋まらない。

シェアハウスよりも問題が長期化

41回――。アパマンオーナーの弁護団が発足した2021年5月から2023年11月末までの間に、スルガ銀と弁護団との間で行われた交渉回数だ。2年半が経過しても協議は平行線をたどっている。

シェアハウスのケースでは、交渉開始から解決までに2年を要した。シェアハウスオーナーが弁護団を結成したのは2018年3月。以後スルガ銀と50回以上もの折衝を重ねた末、2020年3月にオーナー257人とスルガ銀との間で和解が成立した。

残るオーナーとも翌2021年、2022年に和解にこぎつけ、スルガ銀は一連のシェアハウス問題から解放された。

シェアハウスが全面解決に至った背景には、2つの要因がある。1つはシェアハウスの特殊性が、スルガ銀に譲歩の余地を与えたことだ。

シェアハウスは投資用不動産としてのマーケットが未成熟ゆえ、行内でも審査ノウハウが確立していなかった。不動産業者が画策した非現実的な収益計画を見抜けず、オーナーに高値づかみをさせてしまった。

行員による不正行為の有無は脇に置き、あくまで審査不備の責任を取る形式を裁判所の調停委員が認定し、スルガ銀は和解に応じた。

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