スルガ銀、「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題

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「高値づかみ」の有無を判断する第1段階では、レントロール(家賃明細表)が重視された。物件価格は家賃収入から逆算して決まるため、レントロールの数字が実際に入居者が支払う家賃よりも水増しされていると、オーナーは不当に高い価格で物件を購入させられたことを意味する。

だが、関係者によれば、単にレントロールが実際の家賃から水増しされただけでは要件には足りず、2割程度の大幅な乖離がなければ高値づかみとは認められなかったという。

第2段階においても、不正行為が確認されただけでなく、行員の関与を裏付ける証拠が必要な点がネックとなっている。早期解決フレームワークは現状、宙に浮いた状態だ。

手詰まり感が漂う中、スルガ銀は交渉の枠外に活路を見出そうとしている。交渉の決着を待たずして、オーナーにアパマンの売却を促すことだ。

スルガ銀によれば、2022年9月から2023年9月までの1年間で64物件が売却によってオーナーの手から離れたことで、弁護団が受任する案件からも外れた。昨今の不動産市況の高騰が、もっけの幸いとなった。

業務改善命令はいまだに解除されていない

実はスルガ銀にとって、シェアハウスないしアパマン問題は財務面での重荷でなくなりつつある。

前者は代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている。

ピーク時に1300億円を突破した実質与信費用は、2025年度以降は年間30億円程度で平準化する見通しだ。

それでも、金融庁が2018年10月にスルガ銀に発した業務改善命令はいまだ解除されていない。

命令の中で金融庁は、「シェアハウス向け融資及びその他投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立」を求めている。

アパマン問題が解決しない限り、投資用不動産にまつわるガバナンス体制が刷新されたとはみなされない。

「アパマン問題の解決は重要な経営課題。1日でも早い解決を希望している」。11月に開催された決算説明会において、スルガ銀の加藤広亮社長はこう述べた。だが、有言実行に向けた打開策は見つかっていない。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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