膠着状態のウクライナ戦争・2024年はどうなるか アメリカの国益と衝突するウクライナ

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以上の内容は、ワシントン・ポスト紙が両国の軍高官など30人以上から聞き取ったものだという。この報道は、アメリカ軍の言い分に偏った内容でなく、本稿筆者が取材したウクライナ軍側の主張と同様の意見も反映された、客観的な内容だと評価している。

余談だが、アメリカ政府は同盟国などとの協力がうまくいかなかったことが起きると、その事象に関し、あたかも同盟国側に責任があるかのように読めるよう、一方的な情報をメディアにリークして、記事を書かせて、責任逃れを図ることがある。

筆者もかつてワシントン時代に時折経験したことがあるが、今回のポスト記事にはこうした気配を感じなかった。

ウクライナを阻むアメリカ「暗黙の戦略」

次に③の戦略を巡る対立である。

・アメリカ軍は、ウクライナ南部ザポリージャ州の要衝メリトポリに絞った一点突破で、アゾフ海沿岸への到達を目指す戦略を主張した。しかし、ウクライナ軍はこれに反対した。

同じザポリージャ州の要衝ベルジャンスク、さらに東部ドネツク州の要衝バフムトの攻略も進める3方面同時攻撃戦略を主張して、譲らなかった。その結果、アメリカ軍側がウクライナ側の主張に折れ、ウクライナ軍は3方面同時攻撃戦略を続けた。

この戦略を巡る対立や、アメリカ軍とウクライナ軍側の緊迫した交渉の内容については、本稿筆者が2023年9月5日付の東洋経済オンライン記事「ウクライナが奪還作戦実行で感じた『手応え』」で、こう記している。

「2023年8月に入りゼレンスキー政権はある覚悟を決めた。膠着打開のため、アメリカ軍が提案してきたペンタゴン流作戦を、あえて拒否する道を選択したのだ。それよりもウクライナ軍が正しいと信じる自らの反攻作戦を続けて活路を見出すという「自らを貫く路線」を採用した。2023年内の作戦で欧米とすり合わせができた」と。

この記述通り、ウクライナ軍は自ら正しいと信じた戦略を維持した。さらにクリミア半島で新たな戦端まで開いた。しかし結果的に、2023年末までにアゾフ海北岸へもクリミア半島入り口へも、地上部隊の到達を実現できなかった。

ゼレンスキー大統領は2023年11月末、アメリカ・AP通信社とのインタビューで「望んだ結果が得られなかった」と挫折感を表明する一方で、年明け後に出直す方針を明確にした。

結局、何が悪かったのか。筆者は上記した軍事的要因のうち、ロシア軍の地上戦能力を軽視し、制空権なきままウクライナ軍に反攻開始を強く迫ったアメリカの戦略ミスが、一番響いたと考える。

逆に、一点突破か否かをめぐっては、その選択が大きく影響を与えたとは思えない。ウクライナ軍側は今でも、あのまま東部戦線での攻勢をやめていたら「とっくに東部をロシア側に完全に奪取されていた」とアメリカ軍提案を否定したままだ。

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