名医が教える「余命わずか」で後悔しない4か条 車椅子生活を余儀なくされた人が気づいた幸せ

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たとえばあなたは、「つらい」「しんどい」という気持ちや、他者に対する嫌悪感、憎しみなどの気持ちがわきあがってきたとき、「そんなことを考える自分はダメだ」と考え、気持ちを押し殺したりしていませんか?

私たちは患者さんの話を聴くとき、「反復」と「沈黙」を大事にし、ゆっくりと時間をかけるようにしています。

たとえば、患者さんがスタッフに「昨日、トイレに間に合わず、恥ずかしい思いをしました」と言ったとします。

そのとき、「歳をとれば、みんなそうなりますよ」などと答えるのはもちろん問題ですが、「少しくらい漏れたとしても、尿漏れパットがあるので、気にしなくて大丈夫ですよ」などと答えるのも、実は好ましくありません。

良かれと思って発した言葉でも、患者さんは「自分の気持ちが否定された」と感じるからです。

自分が感じたことを否定しない

ここで大事なのは、あくまでも「昨日、トイレに間に合わず、恥ずかしい思いをしました」という患者さんの言葉をそのまま受け止めることです。

ですから、私たちは、「昨日、トイレに間に合わず、恥ずかしい思いをしました」と言われたら、「昨日、恥ずかしい思いをされたのですね」と患者さんの言葉のうち、重要なキーワードを反復します。

その後、患者さんが口を開くまで、こちらからは話しかけずに沈黙し、「今までは、トイレに間に合わないことなんてなかったのです」と言われたら、「今までは、間に合わないことはなかったのですね」と反復します。

相手の言葉をそのまま受け止め、反復と沈黙を繰り返す。

非常に難しいことではありますが、そうすることで患者さんは、私たちのことを「自分の気持ちをわかってくれている」と感じ、少しずつ気持ちを話してくださるようになります。

自分を否定しない習慣
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そしてこれは、自分自身の気持ちに対しても同じだと言えるでしょう。

今後は、自分が感じたこと、思ったこと、言いたいことを、できるだけ否定しないであげてください。

「そうか、私はこう感じたんだね」「私はこう思ったんだね」「私はこれが言いたいんだね」と、そのまま受け止めてあげてください。

自分自身が感じたことを尊重していく。

それも自分自身を肯定することにつながっていくのではないかと、私は思います。

私たちは誰もが、いつか必ずこの世を去ります。

そのとき、自分自身に対して「お疲れ様でした」と思えるように、本当の自分らしさを見つけ、自分自身を愛し肯定し、後悔のないよう前を向いて、今日という一日を生きていきたいものです。

小澤 竹俊 医師

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おざわ たけとし / Taketoshi Ozawa

1963年東京生まれ。1987年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。1991年山形大学大学院医学研究科医学専攻博士課程修了。救命救急センター、農村医療に従事した後、1994年より横浜甦生病院ホスピス病棟に務め、病棟長となる。2006年めぐみ在宅クリニックを開院。これまでに3800人以上の患者さんを看取ってきた。医療者や介護士の人材育成のために、2015年に一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会を設立。著書に『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』(アスコム)がある。

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