AI画像認識の中国「センスタイム」に粉飾疑惑浮上 アメリカの「空売り屋」が売り上げ水増しを指摘

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ところが中国の裁判所は、上述の取引について「発注書と請求書があるだけで、商品の受け渡しをしない架空取引」だったと認定。センスタイムの訴えを退けた。グリズリーは、この取引がセンスタイムと精儀達科技にもう1社を加えた3社による、売り上げ水増しのためのスキームの一部だったと主張している。

センスタイムの粉飾疑惑を指摘したグリズリーは、疑わしい銘柄の調査レポートを発表すると同時に空売りをかける「ショートセラー」として知られる(写真は同社ウェブサイトより)

グリズリーは、センスタイムの売上高の4割が(スマートシティー・プロジェクトなど)中国の政府関連需要に依存していることも危険視。「中国の地方政府の主要な収入源(である土地売却収入)は大きく縮小しており、センスタイムの売掛金が回収不能になる恐れがある」とリスクを強調した。

政府需要依存からの脱却に苦戦

レポートは香港証券取引所の開示情報をもとに、センスタイムの支配株主である湯暁鴎氏や、中国のEC(電子取引)大手のアリババ・グループ、日本のソフトバンクグループが保有株の売却を始めているとも指摘した。

センスタイムはAI画像認識技術のなかでも顔認証技術に強みを持ち、IT技術を活用して都市の課題を解決するスマートシティー・プロジェクトのソリューションを中国各地から受注していた。

本記事は「財新」の提供記事です

だが、スマートシティー関連の売上高は2022年を境に大幅な減少に転じた。センスタイムの2023年上半期(1〜6月)の決算では、スマートシティー部門の売上高は1億8300万元(約38億円)と前年同期の半分未満に落ち込んでいる。

(財新記者:杜知航、趙薇)
※原文の配信は11月28日

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ザイシン ビズアンドテック

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