「言葉のプロ」が実践、感情が伝わる日本語のコツ 日本語は感情を緻密に設計できる言語だ
田丸:えーっ、そうなんですね。
ナージャ:コピーライターに配属されたのはなりゆきで。それこそ逆境の毎日でしたよ(笑)。
田丸:ちなみに今どれくらいの言語を話されるんですか?
ナージャ:日本語とロシア語と英語は比較的いつも喋っていますし、あとフランス語がちょっと。イタリア語がほんのちょっと喋る感じです。5カ国語とまではいかないですけど、4.3カ国語みたいな感じですかね。
田丸:いろいろな言語に触れられているナージャさんにとって、日本語は他言語に比べて、どうなんでしょう? 覚えるのは難しかったですか?
ナージャ:そうですね。来日してすぐのときは日本語の漢字は、古代エジプトの文字を見るような感覚ですよね。一生かかっても読めないと思っていました。文字を読めないので耳で覚えるしかなくて、同級生が話しているのをひたすら聞いて、真似していましたね。
田丸:音から入ったんですね?
ナージャ:はい。でも日本語って口の動き方がロシア語とまったく違うんです。ロシア語は単語も長いし、「R」とかの子音が続くことが多い。喋り方も、語調が強いんですね。一方、日本語は子音と母音をセットでしゃべることが多くて、音が柔らかいんです。そんなに口を大きくあけることもないし、優しくゆっくり喋る感じで。自然と笑顔になるんですよ。
田丸:へぇ、笑顔に!
ナージャ:日本に来る前は、笑顔を見せることは隙を見せることだと教えられていて、外では基本的には無表情だったんです。でも無表情で日本語をしゃべるとなんだかヘンな感じがするんですよね。
日本語は感情を緻密に設計できる言語
田丸:日本語で話すと、笑顔が出てくるってことですよね? 言語が国民性に影響を与えているかもしれないと考えると、すごく興味深いお話です。逆に言えば、外国語を学ぶときには所作や表情などを真似てその国らしいキャラクターになりきることからはじめてみると、習得が早くなるかもしれない?
ナージャ:そうですね。空気感や間みたいなものは、言語によってまったく違いますから、そこから真似してみるのもおもしろいかもしれませんね。
田丸:そうですよね。もしかしたら、日本語をネイティブにする日本人でさえも、もっとゆっくり優しく穏やかな気持ちとか表情とかを意識して喋ることで、さらに日本語のポテンシャルを引き出せる可能性もあるかもしれないですね。
田丸:コピーを書くときに、どんなことを大事にしていますか?
ナージャ:そうですね。書く対象についてじっくり観察して「なにがどうユニークなんだろう?」「どういう見方ができるかな?」とまず個性を探します。そのうえで、どうやったらわかりやすく短く、みんなが意外と気づいていない良さを伝えられるかを考えることを大事にしていますね。実は最初に良さを見つけるときには、英語で考えることが多いんです。
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