「言葉のプロ」が実践、感情が伝わる日本語のコツ 日本語は感情を緻密に設計できる言語だ

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田丸:ナージャさんは、言葉のインプットはどのようにしているんですか?

ナージャ:街で見かけたおもしろい言葉はぜんぶメモします。カフェで見かけたユニークなメニュー、ファッション雑誌に載っている不思議な言葉の組み合わせ、映画のセリフや音楽の歌詞なんかも。

田丸:それは、日本語の?

ナージャ:英語のほうが多いですね。おもしろい言葉を見たときに、なんかいいな、わくわくするなってアドレナリンが出る感じが好きなんです。

田丸:コピーを書くときにも、そのメモを見返したりしますか?

ナージャ:します、します。わくわくしていないとおもしろいものなんて書けないから、気分を高揚させるためにメモを見たり、何冊か雑誌を並べてぱっと目についた言葉からヒントを得たりすることもありますね。

田丸:言葉をスイッチにしているんですねぇ。おもしろい! ちなみに好きな日本語はありますか? さまざまな言語に触れてきたナージャさんがどんな日本語に惹かれるのか、知りたいです。

擬音語・擬態語には日本語の魅力がつまっている

ナージャ:好きな日本語はたくさんあるんですけど……そのなかでも日本語ならではだなぁと思うのは擬音語と擬態語です。

田丸:ほう!

ナージャ:擬音語と擬態語を使えば、だいたい会話が成り立つじゃないですか。「休日にゴロゴロして、モグモグして、むにゃむにゃした」って言ったら、ああそういう一日を過ごしたんだなって(笑)。他の言語ってほぼないんですよ、擬音語自体が。

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田丸:ははあ。

ナージャ:擬音語と擬態語の種類が多いのが、日本語のめちゃくちゃおもしろいところだなと思います。しかも、かわいいんですよね。「ぷにぷに」とか「チクチク」とか「モフモフ」とか。これって、訳せないんですよ。

田丸:「ぷにぷにとはなにか?」から解説しなくちゃいけなくなっちゃいますよね。

ナージャ:そう、そう。「サクッとした」とかもクリスピーって言えばいいのかもしれないけれど、やっぱりちょっと世界観が違う。日本語にしかないおもしろさですよね。

田丸:雨が降る様子だけでも「しとしと」「ざあざあ」「パラパラ」「ゴウゴウ」とたくさん表現がありますしね。

ナージャ:聞けば、どんな雨の様子だったのか、想像できちゃうじゃないですか。それがすごいし、おもしろい。一時期、擬音語・擬態語を集めていたことがありました。擬音語・擬態語には日本語の不思議な魅力がつまっていますよね。やはり余白やニュアンス、世界観をつくるのがうまい言語だから、どんどん種類が増えていくのかなと思いますね。

田丸 雅智 小説家・ショートショート作家

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たまる まさとも / Masatomo Tamaru

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。ショートショートの書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。2021年度からは中学1年生の国語教科書(教育出版)に小説作品が掲載。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。メディア出演に「情熱大陸」「SWITCHインタビュー達人達」など多数。

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