イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質

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そもそも二国家解決案は双方が互いに相手の存在を認めることが前提となる。しかし、イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。

またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている。

新たな対立を生むのか、入植の現状を追認するのか

仮にオスロ合意と同じようにヨルダン川西岸全域をパレスチナ国家にするとなれば、入植した70万人のユダヤ人は出ていくことになるのか。それは新たな対立を生むだけだ。だからと言って現状追認でパレスチナ人が住む飛び地だけを新しい国家とすれば、それはもはや国家としての体をなさない。

つまり入植地拡大が事実上、ヨルダン川西岸のパレスチナ国家樹立を不可能にしているのである。

またパレスチナ国家を作るとしても、現在のパレスチナ側にまともな統治主体がないことも大きな問題だ。

今回の紛争でガザ地区の統治を担っていたハマスは壊滅状態となるだろう。イスラエルは少なくともハマスによる統治は認めない。しかし、ハマスに代わる組織は想像すらできない。一方、ヨルダン川西岸を統治する立場にある暫定自治政府は、汚職と腐敗でほとんど当事者能力を失った状態にある。

統治主体なき国家はありえない。パレスチナ国家を作るためには、気の遠くなるような準備が必要になる。

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