現時点で9月の利上げ予想が優勢なのは、FRBも金融市場も4-6月期のGDPは2%台の成長を達成できると考えているからです。私にはこの楽観的な予想がどうしても腑に落ちません。米国経済の本質から目をそらしているとしか思えないのです。
1-3月期のGDP減速の最大の要因は、ドル高に伴う輸出の減少にあります。GDPの改定値の内訳を見てみると、輸出が7.6%減、民間設備投資が2.8%減となる一方で、個人消費支出は1.8%増、民間住宅投資は5.0%増となっております。輸出のマイナスが突出することによって、GDPの足を引っ張っているわけです。
「ドル高→企業収益の減益→株価急落」のリスクに注意
これは、2008年のリーマン・ショック以降、米国のGDPの増加寄与分で突出していた企業部門の収益が、ドル高によって伸び悩んできているということを意味しています。米国主要企業の増益率は2015年1-3月期に2%程度にまで落ち込み、続く4-6月期は減益になるのではないかと言われています。それと重なるように、グローバル企業の経営者がドル高に対する不満を口にすることも増えてきています。
実際に減益が現実のものとなれば、2009年7-9月期以来となるので、いくら世界的な緩和相場で株価を維持できているとしても、株価へのマイナスの影響は決して無視できないものとなるでしょう。株価が下落するようになれば、もちろん、消費―とりわけ高額消費の減少が懸念されるところです。
現在の為替市場では、ドル相場は1-3月期よりも高い水準で推移しています。今後も現在のドル高の水準が維持されるかぎりは、いくら1-3月期のGDPのマイナス要因となった冬場の寒波や労働ストの影響がなくなったとしても、4-6月期のGDPは1%程度の成長が妥当なところではないでしょうか。そして、FRBが想定している2%程度の成長達成は、ここからある程度のドル安が進行しなければ、極めて難しいのではないでしょうか。
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