大災害のリスクをどうヘッジすべきか--ロバート・J・ シラー 米イェール大学経済学部教授

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日本のトリルズは90年には非常に高い価格で販売できただろう。おそらく配当利回りは1%未満だったはずだ。90年の時点では、日本の高成長を知っている人々はその後数十年にわたって日本のGDPは急成長すると予想していたに違いない。

GDPが479兆円となった2010年には、479円の配当が支払われる。それは当初の利回りほど高くはなく、多くの投資家は失望することになっただろう。成長期待が低下すれば、トリルズの価格は下がることになるはずだ。価格低下は投資家にとって損失となるが、日本にとっては利益で、日本が被る経済的な損失を補填することになる。

日本の国債残高はGDP比で202%に達し、その先行きが懸念されている。もし日本政府が国債の代わりにトリルズを発行し、世界の投資家から得た資金で財政赤字の大半を賄っていれば、その比率はかなり低くなっていた可能性がある。債務負担が軽減されていれば、日本政府はもっと楽に不況に対処することができたはずだ。

過去のリスク管理の失敗を補填するために今できることは何もない。しかし、災害や経済危機が、将来のリスク管理に向けた根本的なイノベーションを生み出す契機となるかもしれない。

Robert J.Shiller
1946年生まれ。ミシガン大学卒業後、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号取得。株式市場の研究で知られ、2000年出版の『根拠なき熱狂』は世界的ベストセラーになった。ジョージ・A・アカロフとの共著に『アニマルスピリット』がある。

(週刊東洋経済2011年6月18日号)

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