大災害のリスクをどうヘッジすべきか--ロバート・J・ シラー 米イェール大学経済学部教授


しかし、15億ドルは義援金を若干上回る程度の金額で、損害額の大きさと比べれば大海の一滴にすぎない。さらに悪いことに、過去の例を見ると、三つの災害は大災害債で定義されている地震に妥当しない可能性がある。いま必要なのは、もっと優れた災害債である。

1990年代以降の“失われた20年”の経済的損失と比べると、三大災害の被害額は少ない。80年代の日本の1人当たり実質GDPの平均伸び率は3・9%だったが、90年以降は1・4%にまで低下している。もし90年以降も80年代と同率で成長が続いていたら、日本のGDPは現在よりも60%大きくなっていたことになる。つまり、その経済的損失は数兆ドルに及ぶのである。

“トリルズ”という将来への切札

もしリスクをうまく管理していれば、日本はGDPの変動による影響を免れることができたはずだ。こうした大規模なリスク管理を経験した国はどこにも存在しないが、現在、そうしたリスクに対応するイノベーションが求められている。

私は長年、「自国のGDPや同様の経済指標にリンクした国債を発行することでリスクをカバーすべきだ」と主張してきた。最も簡単なのは“GDP株”である。私とカナダのヨーク大学のマーク・カムストラ准教授は、“トリルズ(trills)”と呼ばれる株式の発行を共同で提案している。それはGDPの1兆分の1に相当する額を毎年、配当として自国通貨で支払うというものだ。

仮に日本の名目GDPが443兆円だった90年に、日本政府がトリルズを発行していた場合、政府は最初の年に443円の配当を投資家へ支払うことになる。その後、毎年、配当はGDPの変化に応じて変動する。世界中の投資家は、大災害債と同様、予想利回りの見返りにGDPの変動リスクを負うことになる。

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