ゼンショー「9年ぶり増資」で攻勢も、直面する不安 「外食業世界一」を目指し、M&Aを加速

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勢いを増すゼンショーだが、同社の過去のM&Aについては、すべてが成功しているわけではない。2002年にアメリカハンバーガーチェーンの「ウェンディーズ」をダイエーから買収し、フランチャイズ展開していた。

しかし、ウェンディーズの事業は思うように成長が見込めず、2009年のフランチャイズ契約期間の満了をもって契約を終了した。

今後も企業買収を継続すれば、減損のリスクを抱え込むことにもなる。スノーフォックスの買収で発生したのれん資産の895億円は、AFC買収の際と同様に、今期中に商標権に組み替える予定だ。商標権に組み替えることで減価償却する必要がなくなり、のれん償却負担は生じない。

牛丼チェーンの「なか卯」は2005年に買収した(編集部撮影)

一方で、商標権は毎年減損テストを行うことになる。買収した企業の経営状況がよくなければ、大きな減損が発生する可能性があるということだ。

ゼンショーは今2024年3月期上期(2023年4~9月期)に既に548億円の商標権を計上している。ここにスノーフォックスの895億円が上乗せされると、1400億円を超える商標権を抱えることになる。

財務基盤も盤石とは言いがたい

ゼンショーは、財務基盤が盤石とは言えないことも気がかりだ。

ロッテリアなどの買収では、劣後ローンで合計400億円を資金調達した。スノーフォックス買収の際は、900億円をブリッジローンで調達した。その結果、2024年3月期上期末の負債は4697億円と、前年同期から1000億円以上も増加した。

自己資本比率も同25.4%と、水準はけっして高くない。競合する吉野家ホールディングスの直近決算の自己資本比率は51.4%、同じくすかいらーくホールディングスも38.5%であることと比べると、ゼンショーの低さが際立つ。

今回の増資によって一時的に自己資本が膨らむが、減損リスクを考えると、さらに自己資本比率が低下することも可能性としてはある。

フード業世界一への道のりは、たやすくはない。まずは今回調達する500億円の資金をどこに振り向けるのか注視したい。

金子 弘樹 東洋経済 記者

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かねこ ひろき / Hiroki Kaneko

横浜市出身で早稲田大学政治経済学部を卒業。2023年4月東洋経済新報社入社。現在は外食業界を担当。食品ロスや排出量取引など環境問題に関心。

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