Z世代が「流行しているもの」より関心があること かつての若者とはまったく違う価値観がある

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こうした特徴から、Z世代に向けた訴求方法については、「有名タレントを起用したテレビCMを数多く打てばいい」という従来のマーケティング常識は通用しない。

NRIにおけるテレビCM効果検証サービスにより蓄積されたデータを分析すると、テレビCMにおいて出演者を思い出すことのできる割合(純粋想起率)とテレビCMの放送回数は、Z世代では比例していなかった(一方、30~60代の中高年層では比例していた)。

小強力なファンコミュニティ持つ「推し」が強い

逆に、放送回数は少なくても、Z世代にとってエンゲージメントの高い出演者では純粋想起率が高まっていたことから、有名タレントをテレビCMのようなマス媒体での広告に起用するのではなく、小粒でも強力なファンコミュニティに支えられる「推し」が出演していることが、Z世代にとっては重要である。

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また、SNSでのつぶやきのネタになりそうなコンテンツも響く。流行とは逆行しそうだが、昭和の雰囲気を醸し出した広告は一見古そうに見えるが、仲間内で話題にできる内容だったことから、Z世代においても意外と受け入れられた例もある。

Z世代では親子仲のいい人が多く、自分たちが知らない親世代の昭和にも興味を持っていることから、こうしたリバイバル流行も起きやすいのが特徴的である。

Z世代における流行は、何が何でも新しければいいということではない。自ら「好き」と思えたことがZ世代では重視される。マーケティングにおいてZ世代を振り向かせるには、「好き」を共感でき、誰かに共有したくなるようなクリエイティブを生み出していくことが求められる。

林 裕之 野村総合研究所 コンサルティング事業本部 マーケティングサイエンスコンサルティング部 シニアコンサルタント

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はやし ひろゆき / Hiroyuki Hayashi

2009年東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻修了後、グローバルコンサルティングファームを経て、2015年野村総合研究所入社。専門領域は、生活者の意識・行動分析、需要予測などの予測モデル構築、購買実績データによる顧客の購買行動特性分析など、データに基づくマーケティング活動支援や戦略立案。これまで執筆した書籍(共著)に『なぜ、日本人は考えずにモノを買いたいのか?』(2016年)、『日本の消費者は何を考えているのか?』(2019年、以上東洋経済新報社)がある。

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