戦場見てきた渡部陽一語る「戦争報道との接し方」 戦争がなくならない原因は「貧困と孤独」にある

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――イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘では、毎日のように悲劇的な映像が流れてきます。私たちはこの現実にどう向き合えばよいのでしょうか。

日々、目を覆いたくなるような映像がたくさん流れてきます。遠く離れて住む僕たちに何ができるのか、誰しもが感じていると思います。

渡部陽一
渡部陽一(わたなべ・よういち)/1972年、静岡県生まれ。明治学院大学法学部法律学科卒業。学生時代から世界の紛争地域を専門に取材を続ける。戦場の悲劇、そこで暮らす人々の生きた声に耳を傾け、極限の状況に立たされる家族の絆を見据える。イラク戦争では米軍従軍(EMBED)取材を経験。これまでの主な取材地はイラク戦争のほかルワンダ内戦、コソボ紛争、チェチェン紛争、ソマリア内戦、アフガニスタン紛争、コロンビア左翼ゲリラ解放戦線、スーダン、ダルフール紛争、パレスチナ紛争、ロシア・ウクライナ紛争など(撮影:尾形文繁)

僕から言えることは一つ。自分が好きなこと、やりたいこと、触れてみたいことをどんどんやってください。日本で暮らしていても、時間はかかったとしても、世界とつながる入り口は日常の中にたくさんあるからです。

世界へ目を向ける入り口はたくさんある

「これってなんだろう」「これを聞いてみたい」「私はこれが好き」……。音楽やファッション、グルメ、ゲームなど大好きなことに熱中していると、情報化社会の現代では必ず世界の人とつながる瞬間が来ます。

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例えばファッションという関心が世界へ広がっていったとき、ウクライナやイスラエル、パレスチナの人とつながる機会があるかもしれません。

その人が暮らす国でなぜ戦争が起きているのか、なぜ傷つけあっているのか。その人自身のこと、その人の国のことを少しでいいから考えてみる、自分自身に重ねてみる、心に寄り添ってみる……。そのような関係性は、それぞれの「大好きなこと」から生まれてくると思うのです。

悲惨な映像を見て悲しむ心、自分には何ができるだろうかと考えること、戦争が起きている背景を学ぶことももちろん大切な力となります。

一方、世界へ目を向ける入り口は、自分の「好き」にもあります。平和とは自由にやりたいことをやれること。肩の力を抜いて、時間がかかってもいいから、自分のペース、スタイルで世界への関心、世界とのつながりを持ち続けてほしいと願っています。

吉岡 名保恵 ライター/エディター

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よしおか なおえ / Naoe Yoshioka

1975年和歌山県生まれ。同志社大学を卒業後、地方紙記者を経て現在はフリーのライター/エディターとして活動。2023年から東洋経済オンライン編集部に所属。大学時代にグライダー(滑空機)を始め、(公社)日本滑空協会の機関誌で編集長も務めている。

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