戦場見てきた渡部陽一語る「戦争報道との接し方」 戦争がなくならない原因は「貧困と孤独」にある

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――戦争が起きるとフェイクニュースも拡散されます。情報を受け取るときの注意点とは。

ウクライナへの軍事侵攻が始まったころ、ロシア軍のパラシュート部隊がキーウ国際空港へ一斉に降り立つ映像や、キーウに向かう戦車の隊列だとする映像が拡散されましたが、僕は「できすぎている」と思いました。

30数年、戦場で撮影をしてきましたが、爆発や攻撃は前触れなく突然起きます。まるで映画のように劇的な瞬間が撮れることは稀(まれ)なのです。

戦場では撮影できる場所にも限りがあります。それなのに、まるで事前に事態が起きるとわかっていたかのような位置からカメラを構え、映画のような映像が撮れているとしたら“違和感のアンテナ”が立ちます。

しかし「戦争が始まったらしい」というタイミングでストーリー性のある映像を受け取ると、うっかり信じてしまうものです。現代の戦争は、情報を管理するものが戦いを優位に進めます。遠く離れた日本に住む私たちも、知らないうちに情報戦に巻き込まれているのです。

気持ちのいい情報には“要注意”

極端にインパクトのある映像や、ストーリー性の高い映像はフェイクニュースであったり、あらかじめ組み立てられた情報であったりする可能性が高いので要注意です。

もちろん普段からフェイクニュースに騙されないよう気をつけている人も多いでしょう。しかし情報感度の高い人でも忙しくて疲れていたり、抑えられない怒りで気持ちがいっぱいだったりすると、いつもならバリアを張っている偽の情報、リスクの高い情報に引っ張られていくかもしれません。

戦場で生まれた子ども
イラク戦争の戦場で生まれた子ども(写真:『晴れ、そしてミサイル』撮影:渡部陽一)

またフェイクニュースにだまされる以前に、私たちが受け取るニュースやSNSの投稿が関心の高い情報にカスタマイズされている、という問題もあります。

それぞれの好みや特性を考慮した情報は“心地よい”ものなので共感し、時間を忘れて没頭してしまいがちです。一方でそれは多様な意見に触れ合う機会を閉ざし、自分自身が特定の情報に管理されてしまっている、という状態でもあります。

だから僕は、受け取る情報が自分にとって気持ちのいい情報ばかりに偏っている、と察知したときは一歩引くようにしています。具体的にはスマホの電源を切ったり、パソコンを閉じたり、情報からいったん離れることを意識しています。気持ちのいい情報には要注意、です。

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