吉野家、持ち帰り特化店「急拡大」の本質的変化 牛丼はテイクアウトを前提とする食文化になるか

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最後の類似点は、売り上げの下落分をテイクアウトで補っただけではなく、その消費体験で同店舗のファンを増やし、コロナ禍収束後も、注文を継続してもらえるよう美味しさに磨きをかけていたことだろう。

では、テイクアウト店舗が消費者にとって良い点はなんだろうか。私は個人的に東京・四ツ谷駅ちかくの吉野家を週に1回ほど利用している。そして、そのほとんどがテイクアウトだ。素早く利用でき、さらに持ち帰って、オフィスで食せる。混雑した店舗に耐える必要もない。

また私はほとんど気にしていないが、コロナだけではなくインフルエンザや風邪も流行している現在にあって、店舗内の人混みに入りたくない人たちもまだ多いだろう。さらに、一度、定着した在宅勤務が根強く、まだまだテイクアウトで業務の傍ら食する人も多いと聞く。

テイクアウト店舗の拡充とそのメリット

次にテイクアウト店舗が出店側にとって良い点はなんだろうか。これは、吉野家も語っているように、出店場所の選定に大きなアドバンテージがある。当然だが、イートインのスペースは店舗にとって面積の多くを占める。それがなくなるのだから、出店の余地が大きく増える。

たとえば、座席が必要な場合は、そもそも出店場所から除外されているケースであっても、接客と調理場所があればいいテイクアウト専門店であれば、これまで検討外だった立地も出店できる可能性が広がっていく。投資の観点からしても、通常店舗よりも少なく済む。ということはフランチャイジーや、フランチャイズオーナー獲得にもつながるだろう。

さらに、現在では、店舗をオープンしたくても、人手が集まらない。逆にいえば、人手さえ確保できれば、店舗をオープンできる時代にある。そのとき、当たり前だが、10人いなければオープンできないよりも、5人のスタッフがいたらオープンできるほうが容易だ。テイクアウト専門店であれば、フロアのスタッフが不要になる。さらに教育も、調理やオペレーションのほうが容易だろう。

何よりも、これまで吉野家に入ったことがない人たちも、テイクアウトなら、と試してくれるかもしれない。実際にテイクアウト店の顧客は新規が大半で、かつ女性客だという。これは、皮肉ではなく、まじめに、女性蔑視の発言で有名になってしまった、同社の汚名を返上するものではないか。

(関連記事:吉野家常務「生娘シャブ漬け」発言がマズすぎた訳

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