ジムニー/ハスラー/クロスビー買っているのは? 「スズキのSUV」4車種の特徴を購入者から分析

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ジムニー同様、ジムニーシエラもやはり特徴的であり、「人を乗せる機会が多い」「室内の広い車にしたかった」「乗り心地の良い車にしたかった」など、普通車を選択する理由として頻繁に上位にあがる項目は軒並み低スコアである。

しかし、そもそもジムニーシエラはオーバーフェンダーで車幅が広くなっているだけで、室内空間はジムニーとまったく同じだ。2ドアで後席も狭いことから、室内空間の広さを求めて買うクルマではない。

ジムニーのインテリア(写真:スズキ)
ジムニーのインテリア(写真:スズキ)

クロスビーでは、「長距離走行をする機会が多い」「室内の広い車にしたかった」のスコアが高く出ており、ハスラーやジムニーシエラとは明確に異なる選ばれ方をしていることがわかる。

登録車の重要性が高まる理由

国内では軽自動車を販売の主軸とするスズキであるが、特にここ10年程度でスイフトやクロスビー、「ソリオ」など登録車のラインナップも充実させ、販売を伸ばしている。

ソリオHYBRID(写真:スズキ)
ソリオHYBRID(写真:スズキ)

軽自動車は日本独自規格であり、現在の規格のベースとなる排気量660cc制限が定められたのは1990年と30年以上前のことだし、衝突安全などを加味してボディサイズが拡幅された1998年以降、規格の改正はない。当然、当時と今ではライフスタイルはまったく異なる。

メーカーの事業戦略としても、ほとんど日本でしか販売できない軽自動車よりも、グローバルで展開でき車種単価も高い登録車に注力したいのは、電動化に向けた投資のための財源確保の観点からも明らかであり、登録車の販売増は今後、ますます重要になっていくであろう。

そうはいってもクルマを買う立場の人々としては、昨今インフレで物価がどんどん上昇する中、少しでも手の届きやすい価格帯のクルマ、具体的には軽自動車のラインナップは充実していてほしいものだ。

人によってはクルマにはあまりこだわりはなく、日々の暮らしや通勤の足として機能すれば十分という人も多いため、廉価なグレードを求めていたりもする。

将来を見据えたメーカー側の問題意識と、生活者側での目の前のお財布事情の双方が、以前よりも合致しづらい局面には入ってきてるといえよう。

インドで発表されたジムニー5ドア(写真:スズキ)
インドで発表されたジムニー5ドア(写真:スズキ)

スズキは、先のジャパンモビリティショー2023で新型スイフトを発表したが、SUVの注目株はインドで公開され、日本導入も噂されているジムニー5ドアだろう。また、クロスビーも発売から6年になることもあり、この先の展開が気になるところだ。

いずれにしても、今回の分析によってスズキのSUVモデルは、どれも個性がしっかりあり、それが「選ばれる理由」になっていることがわかったといえる。

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三浦 太郎 インテージ シニア・リサーチャー

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みうら たろう / Taro Miura

北海道大学大学院理学院卒業後、インテージ入社。自動車業界におけるマーケティング課題の解決を専門とし、国内最大規模の自動車に関するパネル調査「Car-kit®」の企画~運用全般に従事。

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