COP28の焦点「グローバル・ストックテイク」とは パリ協定の目指すべき姿への軌道修正の機会

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とはいえ、GSTの意義は大きい。

第1回GSTのプロセスは2021年のCOP26に始まり、約1年半で評価に必要な情報を収集し、その情報に基づいて進捗状況が検討されてきた。GSTには評価の基準値や目標、専門の審査官は定められておらず、「技術的対話」というユニークな手法が採用されている。

筆者も3度の技術的対話に参加した。政府関係者、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書の執筆者、国連機関、研究機関、民間企業、そして非政府組織(NGO)の専門家らが集まり、議論が行われた。

このように異なるグループが一堂に会し議論する機会は、パリ協定の枠組みの中では限られている。科学的な知見を深めると同時に、実際に気候変動対策を実施している現場の声が提供され、各国の交渉官が真剣に耳を傾ける姿が印象的であった。

最新報告書は「さらなる対策の必要性」を指摘

技術的対話における議論のポイントは大きく2つに分けられる。まずは一般的な進捗評価のイメージに近い、過去の進捗や課題に関する検討である。次に、これらの課題を克服するための対策や将来に向けた対策の機会を特定していくというものである。

今年9月に公表されたこれまでの議論をまとめた報告書は、「気候変動対策に一定の進展はあるが、さらなる対策が必要である」と指摘し、社会の仕組みを根本的に変え、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する必要があるとしている(日本語での解説資料はこちら)

温室効果ガスの排出状況については、各国の削減目標値を合わせてもパリ協定の気温目標の達成にはほど遠く、目標を達成するための政策や対策も不十分であることが再確認された。一方で、大幅な削減を可能にする費用対効果の高い対策はすべてのセクターに存在するとされる。

社会の仕組みを変えていくためには、再生可能エネルギーの拡大や化石燃料の段階的廃止を迅速に進めることが不可欠であり、同時に大気汚染対策や雇用対策との相乗効果を狙った取り組みが有効であるとされる。

気候変動への「適応策」については、適応策を進めるための計画作りに進展はあるものの、計画の実行は遅れていることが再確認された。地域の実情に沿った対策を速やかに進めるとともに、そのための資金支援の規模を拡大する必要があるとされる。

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