COP28の焦点「グローバル・ストックテイク」とは パリ協定の目指すべき姿への軌道修正の機会

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報告書に含まれるこうしたポイントは、実のところ、決して新しい知見ではない。

重要なのは、報告書の内容は各国の交渉官や専門家の間で協議されたものであるということ、そして、COP28で各国が報告書の内容に基づきGSTの成果文書を作成し、合意する必要があるということだ。

GSTの成功は、各国が評価結果をどの程度受け入れ、今後の気候変動対策を後押しする強いメッセージと政治的意思を発信できるかにかかっている。

削減目標の引き上げにつながる成果とはどのようなものだろうか。

今年3月に公表されたIPCCの報告書は、「この10年で実施される選択と行動は現在そして数千年にもわたって影響を及ぼすだろう」と指摘する。GSTの成果は、この10年において誰がどのような気候変動対策をどのように実施すべきかを示すロードマップとして、今後の行動の指針を提供し、実際の行動を促すものになることが望ましい。

鮮明化する各国の意見の隔たり

しかし成果の内容をめぐっては、各国の意見の隔たりがすでに明確になっており、COP28での交渉は困難を極めることが予想される。

GSTの目的は、各国が削減目標を更新し、強化するために必要な情報を提供することである。したがって、目標更新のための推奨事項や具体的な対策案が示される必要がある。

2022年3月の国連の報告によると、すべてのセクターと温室効果ガスを排出削減の対象に含めているのは193カ国中115カ国(60%)にすぎず、特定の基準年からの絶対的排出量削減を目指す国は69カ国(36%)だけである。

日本を含むすべてのセクターと温室効果ガスを対象とした絶対的排出量目標を掲げる国々は、他の国に対しても同様の削減目標を立てることを促し、より明確な削減目標の策定と、即時の排出削減につなげていきたい意向だ。

他方、そもそも削減目標は各国が自国の事情を考慮して定めるものであり、これに対して何かを推奨したり、ガイダンスを与えたりすべきではないという根強い反発もある。

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