韓国「トコジラミ大発生」で住民が大慌ての実態 パンデミックならぬ「ピンデミック」で大わらわ

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こうした事態を受け、ソウル市は7日、地下鉄などの公共交通に対する防疫を強化すると発表。とくに、トコジラミが発生しやすい布素材の座席を重点的に点検・消毒する方針を明らかにした。さらに、布素材の座席を段階的にトコジラミが繁殖できないプラスチック素材にかえる方針を打ち出した。

政府は個人情報保護や風評被害を防ぐために、トコジラミの発見場所を公開しない方針である。一方、市民からの情報提供や報道、政府発表資料を元に、トコジラミの発見場所を地図上に表示、一目で把握することができる「トコジラミ発生情報アプリ」のサービスも始めた。このサービスによると、13日に現在ソウル市を中心に41カ所からトコジラミが発生している。

トコジラミを吸い込む掃除機が爆売れ

あちこちで見つかっているトコジラミは、消費にも影響を与えている。

トコジラミ対策関連商品の売れ行きが好調だ。韓国の大手通販サイトによると今月1日から7日までのトコジラミを吸い込むことができる掃除機の販売が740%増えた(前年同期比)。トコジラミの繁殖を防げるマットレスカバーの販売は110%、スチームクリーナーの販売は65%増加した。

株価も反応している。トコジラミ駆除用薬品関連企業の株価が値上がりし、1日で前日比29.75%値上がりした企業もある。

一方、ホテルなど、旅行業界は「ビンデミック」が旅行自粛につながるのではないかと神経を尖らせている。ある旅行代理店関係者は「予約キャンセルについての問い合わせや、宿泊先についての詳細な情報を求めるお客さんが増えている」と話した。

コロナ禍が落ち着き、人と物の移動が活発になっている中、トコジラミの拡散は再び人々の動きを萎縮させる要因になるのではないかと、韓国社会に不安が広がっている。ただ、トコジラミに対する漠然とした不安が誤った情報を生み出している側面もあり、注意が必要だ。

朴眞煥 報道番組ディレクター、ジャーナリスト

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パク・ジンファン / Jinhwan Park

1975年韓国ソウル生まれ。韓国漢陽大学大学院卒業後、作戦将校として空軍に入隊(元空軍大尉)。2005年来日、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程中退、専門は文化人類学。韓国における軍事文化、徴兵拒否運動、反戦平和運動について研究を続け、筑波大学研究員を経て、2016年から現職(主に朝鮮半島情勢、日韓関係を取材し執筆、メディアに出演中)。著作に「韓国社会の徴兵拒否運動からみる平和運動の現状」「異文化で自文化を研究すること語ること-非日常な軍隊経験と前後の日常」など。

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