「デフレ完全脱却」の政策はデフレマインド丸出し 需要刺激の大型補正予算をコロナモードで賄う

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そうした、ある種の偶然の一致があって、補正予算編成に合わせて、一般会計で追加発行しなければならない国債を、当初で財投債として発行する予定だったものを振り替えて、国債発行を総額としてはできるだけ増やさないように腐心したというわけだ。国債を円滑に消化するためである。

現に、2022年度には、一般会計の補正予算のために、財投債の発行を8兆5000億円も減らして一般会計の国債増発に回した。そして、2023年度補正予算でも、財投債の発行を7兆円も減らして一般会計の国債増発に回している。

これにより、一般会計での国債増発は前掲の8兆8750億円だが、その他のやりくりも含め、年間を通した2023年度の国債発行総額は3557億円の増加にとどまった。

上がる金利、国債の利払い負担は増す

こうした芸当ができるのも、コロナ禍だからである。つまり、コロナ禍での資金繰り支援のために、財投債を多く必要としていたが、見込みよりは少なくなったために、補正予算で一般会計の国債増発に振り替えることができた。

その意味で、2023年度補正予算はコロナ禍から脱却できておらず、まだ正常化していない。

しかし、新型コロナが収束すれば、資金繰り支援は不要となり、補正予算で一般会計の国債増発に振り替えられるほどに財投債の発行枠を多くする根拠がなくなる。10年物の国債金利が1%に迫り、その上昇を表立って抑え込むことはしない方向に金融政策も動いているのだから、補正予算時には国債発行を減らしこそすれ、増やしていてはより重い金利負担にさいなまれることとなる。

総合経済対策の名の冠には、「デフレ完全脱却」とある。その名の通りに奏功すれば、政策立案の発想も「デフレ完全脱却」しなければならない。つまり、需要喚起の財政出動ではなく、物価高騰抑制のための財政政策が必要である。

需要喚起の財政出動という、「デフレマインド」丸出しの政策立案の発想から完全脱却しなければならない。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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