ガイドブックに載らない東欧鉄道「地味旅」の妙味 ポーランド・ヴロツワフからプラハへの山越え
もう少し下シレジア州立鉄道を深掘りしたい。下シレジア州立鉄道は地域のローカル輸送を担うべく、2009年に設立された州立の鉄道会社である。ポーランドでは2009年にポーランド鉄道の地域輸送部門が地方自治体に譲渡されている。その結果、国内の鉄道輸送は長距離旅客輸送がPKP(ポーランド鉄道)インターシティー、地域間旅客輸送がポルレギオ(Polregio)、そして地域内旅客輸送が各地方自治体が運営するというわけだ。
下シレジア州立鉄道は積極的に新車の投入を進めている。筆者が乗車した45WE形が最新形式と思いきや、実は最も新しい車両は2022年から導入を進めているポーランド車両メーカー・ペサ社のElf 2の48Wec形だ。新車の導入にあたっての資金は自社だけでなく、EUからの支援も得ている。たとえば、2020年9月にペサ社に発注した際は自社資金、EU、そして下シロンスク州からの融資により、計1億4500万ズウォティ(約50億円)を用意した。
また、サービスもきめ細かい。昨年から始まったサービスとして、自転車専用貨物車両サービスが挙げられる。これは旅客列車の最後尾に最大38台の自転車が載せられる貨車を連結するというもの。利用者は出発30分前に予約を済ませ、15分前に自転車を乗務員に渡す。下シレジア地方はサイクリングが盛んで、貨車サービスは主にサイクリング愛用者をターゲットとしている。下シレジア州立鉄道によると、この貨車サービスはポーランドで初の試みだという。
あくまでも、車窓からの印象だが、各駅ともきちんと看板が整備されており、想像以上に良い鉄道会社だった。SNSを見ると、ヨーロッパ旅行において、その国を代表する鉄道会社が叩かれる投稿が目立つが、下シレジア州立鉄道のような鉄道会社に出会うと印象が変わることだろう。
ローカル線から観光路線へ成長か
2023年9月現在、ヴロツワフ―プラハ間には直通列車は存在しないが、来年冬には大きく変わる。
なぜなら、2024年12月からヴロツワフ―プラハ間にてレオエクスプレスの特急列車が復活するからだ。既に予定ダイヤは発表されており、ヴロツワフ―プラハ間の所要時間は約4時間で、1日4往復が運行される予定だ。使用車両は現在使用しているスイスのシュタッドラー社製のフリート(Flirt)型で、車内は日本の特急列車と比べ遜色はない。
プラハはあらためて説明するまでもなく、人々を魅了する古都だ。一方、ヴロツワフはプラハと比較すると地味だが、ユニークなシルエットをした旧市庁舎やフレスコ画に圧倒されるヴロツワフ大学講堂など見どころが多い。まだ、外国人観光客が少ない分、落ち着いた雰囲気を保っていることも特徴だ。往路はレオエクスプレス、復路はローカル列車のように、ヴロツワフとプラハをセットにした鉄道旅行は楽しい旅になるに違いない。
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