ガイドブックに載らない東欧鉄道「地味旅」の妙味 ポーランド・ヴロツワフからプラハへの山越え
筆者は飛行機の都合もあり、ヴロツワフからプラハまで戻る必要があった。せっかくなので、高速バスではなく列車の旅を選択したわけだが、2023年9月現在、ヴロツワフ―プラハ間の直通列車は存在しない。実は2019年12月にチェコの鉄道会社「レオエクスプレス」がヴロツワフ―プラハ間にて週末運行の特急列車を運行していたが、新型コロナウイルス感染症により、現在は休止中である。余談だが、ヴロツワフからベルリン行き国際列車は存在する。
グーグルマップで調べるとドイツ経由のルートも表示されたが、筆者はスデーティ山脈越え、すなわち山越えのローカル列車の旅を選択した。コースとしてはヴロツワフから普通列車でチェコ側の国境の町、リフコフ駅まで行き、同駅でウースチー・ナド・オルリーチー行き普通列車に乗り換え。ウースチー・ナド・オルリーチー駅はチェコ東西を結ぶ幹線に位置するため、急行列車でプラハ本駅まで戻るコースだ。
ヴロツワフ中央駅8時17分発のリフコフ行きに乗るわけだが、ヴロツワフ―リフコフ間の普通列車はポーランド鉄道ではなく下シロンスク州立鉄道が運営する。
本線の優等列車よりも快適
8時頃にホームに上がると、すでにリフコフ行きの電車が入線していた。週末ということもあり、ホームには登山に向かう若者が目につく。電車はポーランドの車両メーカー・ネヴァグ(Newag)社製の45WE形だった。デビュー年は2017年で、列車は4両編成で構成されている。車内は2列+2列のシートが並ぶ。座席横にはUSBプラグもあり、車内案内表示器も備え、ポーランド語がわからなくても大丈夫だ。2014年にヴロツワフを訪れた際に見た旧型電車とは雲泥の差だった。
8時17分に出発した電車は南へ向け、リフコフ駅を目指す。しばらくすると女性車掌による検札があった。ポーランド鉄道よりも下シロンスク州立鉄道の車掌のほうが丁寧な印象を受ける。筆者が乗車した日は8月中旬ということもあり、ポーランドでも30度を超す真夏日であった。一方、車内は新型車両ということで、冷房の利きもよく、実に快適。正直なところ、冷房の利きがイマイチだったチェコからポーランドへの国際客車列車よりも数段、快適な旅であった。
ほぼ定刻の10時30分頃にリフコフ駅に到着した。チェコ側の国境駅とはいえ、山間にあるちょっとした乗換駅といった感じだ。ここで、ウースチー・ナド・オルリーチー行き普通列車に乗り換えるわけだが、ホーム上には筆者のような乗り換え客が列車の到着を待っていた。10分ほど待って、小ぶりな新型ディーゼル車が入線した。前面には「leo express」と表記されている。実は2019年からレオエクスプレスがリフコフを含むパルドゥビツェ地方にあるローカル線の輸送を引き受けているのだ。レオエクスプレスにはチェコと近隣諸国を結ぶ国際列車というイメージがあるだけに、ディーゼル車の前面を見た際は驚いた。
ウースチー・ナド・オルリーチー駅で急行列車に乗り換え、プラハ本駅に到着したのは13時頃。ヴロツワフから約5時間の列車旅であった。
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