コマツが賭ける資源国市場、中国の減速でも“強気”

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コマツが賭ける資源国市場、中国の減速でも“強気”

「販売サイドは強気。業績の下振れリスクは小さいと考えていい」。5月24日、コマツの本社会議室で開かれた投資家ミーティング。野路國夫社長は不満げな証券アナリストを前に、大見得を切って見せた。今2012年3月期、コマツは売上高2兆円台の回復と4割近い営業増益を計画している。

アナリストらの疑念の元凶は「中国」だ。マンションや都市インフラの建設需要で、いまや中国は油圧ショベルの世界最大市場。コマツはそこで、米キャタピラーなどを抑え、15%でシェアトップを走る。自社の建設機械の売上高でも、2割(金額ベース)を中国に依存している。巨大市場の成長が鈍化すれば、コマツの業績もつまずくに違いない、と懸念されているのだ。

株価が急落した理由

中国の景気失速の気配は色濃い。新車販売台数など複数の経済指標が11年に入って鈍化。さらに今後も、インフレ対策として金利引き上げなどの政策が導入されるのは、ほぼ確実だ。ミーティング前日の23日、コマツ株が6%近く急落(終値)したのも、コマツの中国事業が減速するとの見通しを、ある大手証券が示したことによる。

実際、コマツの中国での販売台数は4月から5月中旬まで、対前年比で実に3割も落ち込んだ。会社側は不振を「想定の範囲内」としたうえで原因を二つ挙げる。一つは最大の書き入れ時の春節(旧正月)商戦が暦の都合で例年より短かったこと。もう一つは中国現地企業との競争が過熱していることだ。

追い上げるのは中国大手の三一重工。11年に江蘇省などの油圧ショベル工場を増強することで、年産能力を前年比2・5倍の3万台に大幅拡大する計画である。実現すれば台数ベースでは、コマツから中国国内シェアトップを奪取できるとはじく。同社の10年のシェアは8%にとどまっているが、鼻息は荒い。

景気の後退や新興勢力の台頭。決してバラ色と言えない環境でも“超強気”な計画をコマツが掲げるのは、中国の後ろに14年間もかけて育て上げた、目立たぬ「ドル箱」ビジネスがあるからだ。

オーストラリアやインドネシアなどの資源採掘現場で使われる、大型のダンプトラックやショベルカー。いわゆる鉱山機械が、コマツに莫大な利益をもたらしている。

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