「おっさん経営者」の鈍さがジャニーズ問題で露呈 日本取締役協会・冨山氏が説く「企業の責任」
──未成年者に対する性加害問題について日本取締役協会は、企業のコンプライアンス姿勢に関する緊急声明を9月に公表し、10月には企業が取り組むべき指針を作りました。どのような考えがあったのでしょうか。
誰かの犠牲の上に築かれる繁栄はもう許されない。企業も今回の問題を我が事としてとらえないとだめだ。「ある芸能事務所が勝手にとんでもないことをした。私たちは知りませんでした」と。それで落とし前をつけたら終わりにする。そんな対応をするグローバル企業に未来はない。
問われているのはセンシティビティ(感受性や敏感さ)。センサーのようなものを経営陣が持っているかどうかだ。社会的に弱い立場に置かれた人々が受ける理不尽や不条理に、共感する感覚がどれだけあるか。
今回、自分なりに未成年への性加害がどれだけ重大な問題なのかについて調べた。欧米では性加害は「魂の殺人」と言われている。これまでは、それだけの問題意識を持っていなかった。多くの人もそんなに深刻な問題ではないと思ったのではないか。少なくとも自分はそうだった。
少数者や弱い立場の人への感覚が鈍い
──冨山さんは9月の緊急声明で、過去に北公次氏の告発本を読んでいたことなどをあげて、自省の弁を述べていましたね。ただ、ほかの経営者のセンサーはまだまだ鈍いのでは。
そういうこともあって日本取締役協会として活動をしている。
なぜセンサーが鈍いのか、その背景ははっきりしている。日本の企業社会は、「高学歴のおっさん」という同質的な集まりだ。自分たちの人生はずっと、マジョリティーの側にいて、その中で競争してきた人たち。だから少数者の側や弱い立場の人に関する感覚が鈍い。ある意味、根源的な問題が日本企業にはあると思う。
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