高値圏にある金は今から買ってもいいのだろうか 「中東情勢一服」でも、金利低下なら再上昇?
金価格が堅調だ。9月後半にはアメリカの長期金利の急上昇を嫌気する形で売りが膨らんだが、10月20日には指標となるNY金先物価格が1トロイオンス=2000ドルを突破した。その後も、2020年8月につけた最高値約2089ドルには及ばないものの、再度2000ドル台をうかがい、高値圏で推移している。
一方、円安も手伝い、国内地金商の最大手である田中貴金属工業が発表している金の小売価格(税込み)は、10月30日に1グラム=1万0653円の過去最高値をつけた。
中東情勢だけで上がったわけではなかった金価格
上昇のきっかけとなったのは、やはり中東情勢の緊迫化だ。10月7日にイスラム武装組織ハマスがイスラエルに対して大規模な攻撃を仕掛けたことで地政学リスクが急速に高まり、「安全資産」としての顔を持つ金の需要が急増した。
とりわけ同月13日の価格上昇は注目に値した。この日はイスラエルが国連に対し、ガザ地区北部から住民を退避させるように通告したことを受け、大規模攻撃が行われるとの見方が強まる中で、買い一色の展開となった日だ。実際、金は1日で50ドル超もの上昇となった。
だが、本来なら安全資産とされるアメリカの国債も買い進まれ、金利は低下するはずだったが、実際はそうならず、金だけが上昇した。これには中東情勢以外のマクロ要因にその理由があった。
この時点では、9月の生産者物価指数(PPI)や消費者物価指数(CPI)も予想を上回るなど、エネルギー価格の上昇を背景にインフレが高止まりする、あるいは改めて悪化する懸念もあった。もちろん、中東情勢が一段と緊迫化すれば、原油相場の急騰をもたらし、インフレをさらに押し上げる恐れが高い。この時点では、FRB(連邦準備制度理事会)の追加利上げの可能性が払拭されておらず、金利が大きく低下する見込みが薄かった。
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