高値圏にある金は今から買ってもいいのだろうか 「中東情勢一服」でも、金利低下なら再上昇?
長期金利がFRBの金融政策の影響を受けにくいことは確かである。だが、アメリカの景気や雇用が堅調を維持し、インフレが高止まりする中では、金利が上昇基調を維持する可能性も十分に高いと見ておいたほうがよい。さらに、政府支出が大幅に増加しており、国債を増発する中で、需給が緩む(国際利回りは高止まりする)との見方もある。
結局、いくら中東情勢不安が高まっても、積極的に安全資産としてアメリカの国債を買い進みにくいという理由があるわけだ。またその分安全資産としての需要が金に集中、大きく相場を押し上げた可能性は高い。こうした相場環境は、まだかなりの期間、続きそうだ。
金価格上昇は「地政学リスク」だけでは長続きせず
では、この先、金市場はどのような展開となるのだろうか。10月31日~11月1日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では利上げが見送られた。また11月2日に発表された10月雇用統計では非農業部門の就業者数が前月比15万人増となり、市場予測(同17万人増)も下回った。3日のアメリカの10年物国債の利回りは4.57%と急低下。ということは、「金は買い」でいいのだろうか。
中東情勢が予断を許さない状況の中では、無理に短期的な見通しを立てないほうがよい。とくに地政学リスクの高まりだけを背景とした足元の安全資産としての需要の強さは、長続きする可能性が低いと思われる。金だけでなく、安全資産の需要は、先行きの不透明感がどの程度強いかで決まるもので、行われている戦闘が激しいかどうかは、意外に影響しないからだ。
確かに、中東情勢の先行き不透明感はどこまでも続きそうな感じを受ける。だが、双方の戦力の違いを考えれば、最低限の人道支援が終了した後、イスラエルが総攻撃を仕掛ければ「ハマス壊滅」という形で決着がつくことも考えられる。大規模な戦闘が始まれば、「終わりの始まり」で先行きの不透明感はむしろ後退、安全資産としての需要も急速に後退する可能性が高い。金相場の好調は、中東情勢不安だけでは長続きしない可能性が高い。
もちろん例外はある。イランや同国が応援する勢力がハマス支援という名目で、この戦闘に介入を深めるシナリオは完全に消えたわけではない。「イスラエル対イランの全面戦争」や、それに近い形になれば、戦闘が長期化、先行きの不透明感も一気に高まることになる。
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