宇都宮LRT「マイカーと対立でなく共存」の好事例 人口減・高齢化社会の"足"確保は喫緊の課題だ
日本初のLRTを導入した富山市で旗振り役を務めた当時の市長、森雅志氏に取材したときのこと。なぜLRTを導入するのかという問いに同氏がまず答えたのは、市民サービスの低下だった。
マイカーがあれば土地の安い郊外で広い家に住める。商店や飲食店も同じで、郊外の街道沿いに大規模なショッピングセンターやファミリーレストランが次々にオープンする。こうして市街地が拡散し、中心部が廃れるドーナツ化現象が起こる。
人口が減少する中でこうした状況が進むと、税収は減るのにごみ収集や除雪の稼働距離はむしろ伸びていく。大型商業施設はほとんどが地元資本ではないから、法人税の多くは外に流れていく。よって自治体の財政がピンチになる。これを止めるために、公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりを進めたというのが森氏の説明だった。
代替移動手段の確保が課題
高齢化については、2019年に東京池袋で起きた、高齢ドライバーによる死亡事故がきっかけになって、高齢者の運転免許返納が進んでいる。マイカーの代わりとなる交通手段を用意することは、多くの地方都市で喫緊の課題だ。
もちろん渋滞の解消も、LRTの目的に含まれている。今回開業した路線の中ほどにある鬼怒川付近は、以前から朝夕の交通渋滞が激しいことで知られていた。筆者も芳賀町にある本田技研工業(ホンダ)の研究施設に、JR宇都宮駅から送迎バスで向かったことがあるが、朝は例外なく渋滞にはまっていたという記憶がある。
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