末期がんで余命半年、名物映画Pの豪胆な死に支度 叶井俊太郎が「異色の対談集」を出したワケ
当の本人はまるで「他人事」のようだが、とはいえ、身体にがんがあるのは明らかだ。本来はここから治療の道を選ぶわけだが、彼は抗がん剤治療を「拒否」する。
「抗がん剤治療でがんを小さくして、手術で取り除くというのが一般的なんだけど、もうその段階でステージ3だったから5〜6センチもあったわけよ。そんな状態で治療を行って、手術を受けたとしても成功率は20%程度で、残りの80%はだいたい2〜3カ月で転移か再発。
すると、どうなるのか? 『もう同じ治療はできない』と医者は言うんだ。そんなにリスクが高いのであれば『じゃぁ、やらんよ』という気持ちになるよね。俺はその成功率の低さに賭けられなかった」
抗がん剤治療を受けるとなると長期入院で寝たきり生活になるのは目に見えていて、吐き気や脱毛も放射線治療による副作用として表れる。もちろん、そのような面も含めて現状では最善の治療なのだが、彼はそれを望まなかった。
その結果、がんもステージ4になった。
「徐々に膵臓がんが肥大化していき、やがて胃や内臓を圧迫するようになった。食事を取っても吐いてしまうことが増えてしまったから、がん治療とは別に、胃を通さずに食道を小腸に届ける手術を受けたんだ。
でも、その手術の前後は食事が取れなくなるから、30キロ近く痩せてしまったね」
「残された時間」の多くを仕事に充てる理由
そう、あっけらかんと話す叶井氏だが、そこから彼は「残された時間」の多くを仕事に充てる。例えば当時、同僚だった筆者に対して、彼はたびたび難題を押し付けてきた。
「次号でさ、今度うちが配給する映画のページを作ってくれない? 頼むよ。俺、がんだから、これが『遺作』になるかもしれないんだよ」
「俺、がんだから」や「遺作」という言葉を盾に取られてしまえば、誰も頼みを断ることなんてできない……。
こうして、彼は『突撃!隣の晩ごはん』(日本テレビ系)のヨネスケ氏がUFOに乗り込む『突撃!隣のUFO』や、巨大ザメと忍者の戦いを描いた『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』(すべて2023年)など、これまで通りB級作品の宣伝・プロデュースに勤しんだ。
ただ、到底これらが「遺作」になるとは、まるで思えない……。そう思っている矢先に発表されたのが、対談本『エンドロール!』である。
本書で叶井氏は映画プロデューサー・奥山和由氏、特殊翻訳家・柳下毅一郎氏、小説家・中村うさぎ氏など、対談相手全員に「自身が余命半年と告げられたら?」と尋ねているが、気になるのは彼自身の考えだ。
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