だが藤田さん、収入を求めてオーストラリアに来たわけではまったくなかった。
「勤務していた病院には、外国人の患者さんもいました。ところが、英語でうまく対応することができなかったんです。病院全体でも英語を話せるスタッフはいなくて。これから自分にできることはなんだろう、と考えたとき、英語ができる看護師が浮かびました」
そう思い立ったのは、看護師1年目。2年目に留学エージェントへの相談を始め、ワーホリという制度を知った。4年目を終えたところを区切りにしようと考え、それまでに費用を貯めたり、英語をオンラインや通信講座で学んだり、と準備を進めた。
「あなたマジメすぎよ。もっと休みなさい」
看護師の仕事はハードだと言われるが、そこから逃れることが目的だったわけではなかった。
「たしかに残業も多かったですし、つらさがなかったといえばうそになります。でも、それ以上に看護師という仕事にやりがいを感じていました。英語ができるようになれば、もっと理想に近づくことができる。大事にしたのは、自分がどうなりたいか、でしたね」
藤田さんが参加したのは、留学エージェント、ワールドアベニューが企画した「有給海外看護インターンシップ」だった。オーストラリアでは、誰でも介護の仕事ができるわけではない。「アシスタントナース」の資格が必要になるのだ。
日本の看護師向けにその資格取得も含めたワーホリを企画したのが、このプログラム。資格取得後は、現地の介護士の派遣会社を通じて仕事も獲得ができるようになっている。実はコロナ禍前から、看護師に人気のプログラムだった。そして、藤田さんは驚くことになる。
「最初に時給を提示されたとき、えっ? こんなにもらっていいの?と思いました。むしろ、こんなにもらえるなら、がんばって働かないと、と思いましたね(笑)」
なんとも日本人らしい反応だが、働き始めて驚いたのは、収入だけではなかった。びっくりするほど働きやすかったからだ。
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