「新・ぶら下がり社員」症候群 企業を脅かす30歳社員の「目の色」を変える処方箋 吉田実著
(3)人手不足と成果主義の洗礼
ようやく会社に入っても、折からのリストラで社内は慢性的な人手不足。悠長に新人育成をする余裕は、多くの会社で失われていた。さらに「成果主義」が流行った時代でもあったため、「新・ぶら下がり社員」は従来と比較して十分な育成を受けられず、「会社に依存するな」と突き放されることになる。その結果、会社・社会への不信感が募ることになった。
(4)転職のチャンスの喪失
それでも経験を積み、やっと実力がついてきたと思った矢先、リーマンショックが彼らを襲う。「いつかは転職」とあたりまえのように思っていた彼らは、もはや今の会社を辞めることすらできないことに気付く。
(5)昇給・昇格の減少
それではと社内を見渡してみると、大量のバブル入社組が滞留している現実を目にする。早期の昇格はとても望めないし、それでは昇給もおぼつかない。将来への期待が、なにももてなくなったのである。
一方的に「若者」に責任を押しつけていない冷静な分析
これらの理由を見ていただければわかるが、本書はありがちな「若者批判論」のように、責任を問題となる世代に押しつけることはしない。本書のタイトル『「新・ぶら下がり社員」症候群』のとおり、「ぶら下がり」はこの年代の本質ではなく「症状」であり、その原因は「時代・会社(上司)」だというのが、本書の主張なのである。
もちろん、くすぶる30歳社員を肯定しているわけではなく、随所に筆者の「そんなことではいけない」という新・ぶら下がり社員へのメッセージを読むことができる。
一方的に「若者」に責任を押しつけていない分、筆者の分析と論理は冷静である。また、だからこそ「そんなことではいけない」という当事者へのメッセージを素直に聞くことができる。「ではどうするのか」という解決策は本書に譲りたいが、経営者・人材育成担当者・30歳社員の三者に読んでいただきたい一冊である。
(東洋経済HRオンライン編集部)
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