「新・ぶら下がり社員」症候群 企業を脅かす30歳社員の「目の色」を変える処方箋 吉田実著
本書のタイトルを見た30歳は、自分自身や周囲の友人たちのことを考え、共感と反感を抱くようだ。共感とは、「たしかにくすぶっている人が多いかもしれない」という実感であり、反感とは「また『若者』(30歳を『若者』と呼べるかはさておき)に責任を押しつける議論か」という思いである。
「ゆとり社員」より根の深い「30歳社員」問題
本書では、30歳社員がくすぶっている現状が、数値で端的に表されている。30歳社員の「共感」を裏付けるデータである。その一部をご紹介しよう。
・「周囲の人に主体的に関われている」
社会人1~3年目:8.4% 社会人7~9年目:4.5%
・「重要な業務を担っていると思う」
社会人1~3年目:10.3% 社会人7~9年目:8.4%
・「仕事で自分らしさを発揮できている」
社会人1~3年目:9.7% 社会人7~9年目:5.8%
現実的には社会人1~3年目社員よりも7~9年目社員のほうが仕事ができない、ということはあるまい。とすれば、この「意識」の格差はより深刻である。近年「ゆとり社員」が問題視されているが、実は「ゆとり社員」よりも「30歳社員」の問題のほうが根深いといえそうである。本書では、その原因は下記の5つにあると説明する。
30歳社員がぶら下がる5つの理由
(1)バブル崩壊を幼少期に経験した
「新・ぶら下がり社員」は、小学校高学年でバブル崩壊を経験した。親の年収が下がったり、同級生の親がリストラされたりした。詳しいことはわからなくても、漠然と社会にただよう不安感を肌で感じた世代である。こういった経験から、「挑戦」よりも「安定」を望む気質が作られた。
(2)就職氷河期の試練
「新・ぶら下がり社員」は、就職氷河期の後半に就職活動を行った世代である。多くの企業に不採用をつきつけられ、自信を喪失した人も多い。それが自己評価の低下を招き、積極性を奪っていった。