「ゾロリは自立の物語」人気シリーズに込めた思い 子どもを信じて見守るしかできない「親ってつらい」
――ゾロリの物語を書くにあたって何か意識されたことはありましたか?
意識したことはありませんが、本がキライな子も最後までおもしろく読めるものをつくろうと考えていましたね。私は小さいころ、母に読み聞かせをしてもらっていたので本が好きでしたが、自分で読めるようになったころ、大人に薦められた本がおもしろくなくて本がキライになった時期がありました。
子どもたちの読書は、楽しみではなくて、なぜか文字や難しい言葉を覚えるための勉強のように位置づけられることが多いですよね。でも、本の楽しさを知る前に、難しい本を手渡されたら、本自体がキライになってしまいます。私は本の楽しさと読むたいへんさの両方を知っているので、本が苦手な子に向けて本を書こうと思ったんです。
シリーズを書き始めた当時は悪役を主役にした児童書はありませんでした。でも、子どもたちはちょっと悪いことに憧れる時期もあります。子どもたちの代わりに、本のなかでゾロリがいたずらをすることで、読んですっきりすることもあるでしょう。といっても、実際に悪いことをしてはいけないので、ゾロリには最後にかならず失敗させることで、「悪いことはうまくいかない」というお話にできると考えました。
でも、ゾロリはどんなに失敗してもけっしてくじけずに、次に向かって歩き出します。人生うまくいくことのほうがすくないけれど、あきらめずに次に進んでいけばまたチャンスがあると感じてくれたらいいなと思っています。そして、ゾロリが失敗するのに反して、ゾロリと関わったまわりの人はみんな幸せになっているんです。本のキャッチコピーで「まじめにふまじめ」という言葉を考えたのですが、ゾロリは大まじめにふまじめなことを考えています。しかし元来、人がいいので、結局誰かのためにがんばってしまうんです。
ゾロリのお話は「自立」がテーマ
――長く続けてきて感じていることはありますか?
あらためて読み返してみると、ゾロリのお話は、「自立」がテーマなのだと気づきました。というのは、ゾロリのママは『ほうれんそうマン』シリーズのときにすでに亡くなっていて、飛行機乗りだったパパも行方不明です。つまりゾロリには両親がいません。そのうえイシシとノシシという頼りない子分までついてくることになり、ゾロリはしっかりせざるを得なくなりました。
でも、もしゾロリのそばにママやパパがいたら、ゾロリは甘えんぼうなので、自分で考えてがんばることができないと思います。それがよくわかるのが、『かいけつゾロリのてんごくとじごく』です。