第二に、原子力から火力へのシフトに伴う発電コスト上昇の問題がある。これは近い将来に生じることが確実であり、定量的にもある程度は見当がつく。東京電力は、LNG(液化天然ガス)の輸入増加のため1兆円程度のコスト増が生じる、としている。浜岡原発の停止によって、中部電力でも同様の事態が発生する。さらに、ほかの電力会社でも同じ事態が発生する可能性が高い。
電力コストの上昇要因は、ほかにもある。東京電力には、原発事故の賠償金、事故収束への費用、廃炉に必要な費用が発生する。5月13日に決定された賠償スキームには、政府の負担が明確に示されておらず、東電の賠償責任に上限が設けられていないので、基本的には電気料金に転嫁されると思われる。
これらに起因する料金引き上げがどの程度になるかは、現時点では完全には把握しにくい。しかし、東電の場合には、火力シフトと合わせて料金が2割以上、上がる可能性が高い。場合によっては、4割程度の値上げとなる可能性もある。
第2カテゴリーに属する問題としてはさらに、震災で損壊した生産施設や住宅、社会資本の復旧のための投資がある。これが行われることは確実であり、どの程度の額になるかはおおよその見当がつく。被害総額が内閣府見通しのように16兆~25兆円程度だとして、復旧期間が2~3年とすれば、毎年の投資額は10兆円程度になるだろう。
ただし、これらの投資がいかにファイナンスされるかについて、現時点でははっきりと見通せない。財政が関与する部分(主として社会資本の復旧)について、主な財源が税になるのか国債になるのかが、まったく不明だ。
民間主体による復興投資についても、金利や為替レートによって、動向が大きく左右される。そして、金利や為替レートは経済政策いかんによって大きく変わる。