(野口悠紀雄のニッポンの選択・最終回)まだ表われていない大震災の経済的影響

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 生産減少の影響は、貿易統計によっても確かめられる。第63回で述べたように、3月の貿易黒字は前年同月比で79・7%減となったが、これには原油価格の値上がりで輸入が増加した影響も大きい。4月の速報値では、輸出は前年同月比で12・5%減となった(輸入は8・9%増)。貿易収支は4637億円の赤字となった。

このように大きな影響が生じているが、生産設備はいずれ回復する(ただし、後に述べるように海外立地が進む可能性もあり、それがどの程度進むかについては現時点では十分な評価が難しい)。

発電施設も大震災によって大きく損壊し、電力供給の量的な側面で深刻な問題が生じている。この問題については前回、定量的な見通しを示した。

東京電力福島第一原子力発電所の事故のように重大で影響が長期にわたるものもあるが、火力については、復旧・増強が行われている。その結果、夏の供給見通しも引き上げられている(ただし次に述べるように、火力シフトによる電力コスト上昇の問題が将来生じる)。

以上のように、第1のカテゴリーは震災による直接的な影響であり、そのほとんどは生産量の減少や電力の供給制約の量的な問題である。

電力コスト上昇と復興投資の増大

第2のカテゴリーとして、今後生じることは確実だが、明確な形の影響はまだ生じておらず、したがって現時点では定量的に把握しにくい問題がある。

その第一は、原子力発電にかかわるものだ。中部電力浜岡原子力発電所が運転停止となり、電力の量的制約は東日本に限定された問題ではなく、全国的な広がりを持つこととなった。定期点検などで停止中の原発の運転再開については、不確実性が大きい。仮に浜岡原発のような事態がほかでも生じれば、量的な意味での電力制約はさらに広がるだろう。

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