「顔なき世界」が支配する「スターウォーズ」の帝国 「顔」を失うことは「生の主導権」を奪われること
老人曰く、ルークはフォースを持っているとのことですが、本作ではフォースという不思議な力を具体的な目的のために使用することはありません。
一方、本作の中でフォースを扱うことのできる人間が二人います。それが老人と帝国軍のメインキャラクターで黒いヘルメットを被り、長いマントを羽織った将軍、ダースベイダーです。
このようにフォースを持っていることがイコール「善」ではなく、フォースを有していても「悪」がいることがわかります。
精神と物質が切り離された世界
しかし本作の世界では、ダースベイダーにせよ老人にせよ、ジェダイは圧倒的に少数者であり、前時代の遺物のような扱いを受けています。明らかにこの世界を支配するのはフォースではなく、テクノロジー(科学技術)なのです。
帝国軍は星一つを一瞬で吹き飛ばしてしまうテクノロジーを持っています。このような帝国と共和国の国力の差が科学技術の圧倒的な力の差として表されています。共和国側こと反乱軍が頼るのは旧式の武器や攻撃機、そしてフォースです。
ただし、反乱軍の兵士たちもフォースで帝国に勝てるとは思っていません。メインウェポンは科学技術なのです。しかし戦闘に出かける際、反乱軍の兵士は口々に「May the force be with you」(フォースのご加護があらんことを)と仲間に対して口にします。
つまりフォースは物質的な兵器とは異なる、あくまで精神的なものでしかないという認識を、この世界の人びとが持っていることがわかります。
本作のように、帝国軍が圧倒的な軍事力によって宇宙中を支配していく世界はまったく「精神と物質が切り離された世界」です。
そのような価値観が常識である帝国軍の他の将軍から見ると、ダースベイダーも「怪しい魔術師」以外の何者でもありません。
この関係は、僕たちの現実においても近代世界が成立した状況と同じです。精神と物質を切り離して認識することで近代科学は成立し、人類による生産活動や消費活動だけでなく、破壊活動までも凄まじいスピードで激化していきました。
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