「岩井の胡麻油」、8代目社長の挑戦とは? 伝統製法による胡麻油を地道に製造

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――流通業界からの転身ということで、だいぶ雰囲気が違ったのではありませんか。

そうですね。地味な業界ですが、先ほども述べたように、新本社・工場の移転・落成を第2の創業だといって、社員のモチベーション向上や業績好転を探るきっかけにしました。

日本で初めて黒胡麻から搾油

――ゴマは輸入に頼っているのですか。

日本はゴマを99・9%輸入に頼っています。日本は年間15万トンから16万トン輸入しています。ゴマは熱帯から亜熱帯の極貧国が主な産地で、そうした国々の最大の換金作物です。先進国で作っているところはありません。国産ゴマもあることはありますが、量はほとんどありません。

種類は白胡麻、茶胡麻、黒胡麻、金胡麻とありますが、特に黒胡麻は健康によいカルシウム、ゴマリグナンやポリフェノールが豊富です。日本で初めて黒胡麻から搾油して販売したのが当社です。黒胡麻の油にビタミンE成分を加えてサプリメントにして販売したのは大手より20年も早く、今もよく売れています。

最近は従来輸出国であった中国が経済発展に伴い、自国産では需要を満たせず、世界各国から「爆買い」して、日本の4倍近くの量を輸入しています。その影響でゴマは価格が下がらない典型的な商品で、年々原料高が続いています。さらに円安で、高い原価での搾油を余儀なくされています。デフレマインドが依然として強く、価格競争は相変わらずで、価格改定がままならない現状です。

――御社に伝わる社是や社訓はありますか。

社是というものはないですが、言われていたのが「誠実、まじめ、こつこつ」というものです。私が戻った時に経営理念を明確にしたほうがいいと思い、伊勢丹での経験も参考にして、企業経営の指針なども合わせて策定しました。これを朝礼で唱和するようにし、毎日ひとりずつ1分間スピーチするようにしたところ、社員に自覚やモチベーションが出てきたように思います。

――この業界の市場規模はいかほどで、御社はどれぐらいの位置にいますか。

市場規模は350億円にいかないぐらいの規模で、減ってはいませんが、成熟している市場ですので劇的には増えません。業界的には4位です。今後は家庭向け製品を伸ばしたいと思っています。今まで全体の出荷金額ベースで1割強まで増えてきましたが、これを3割までもっていこうという目標です。もともと西海岸を中心に米国向けの輸出も強く、米国ではラー油が好評を博しています。

昭和初期の搾油工場(写真:岩井の胡麻油提供)

――長い歴史の中で、会社が苦労したのはいつごろだったのですか。

ずいぶんあったようです。火事にあったり、1923(大正12)年の関東大震災にあったり、戦争の影響で原料が入らず、1941(昭和16)年から1946(昭和21)年までほとんど会社が休眠状態だったりしたことです。最近はここ2年の原料高と円安ですね。

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