マイナ保険証、今度は「窓口負担誤表示」多発の実態 信頼失墜し利用率が低下、紙の保険証廃止は無理筋

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もっとも、これらの対策で十分とは言いがたい。厚労省が確認を求めたのは、健康保険を運営する保険者およびレセコンメーカーで、確認内容も、オンライン資格確認システムの中間サーバーにおける誤表示の修正の件数やレセコンメーカーへの対応策の実施状況などに限られている。一人一人の患者(被保険者)について、正しい請求が行われているかの確認までは求めていない。

そのことをとらえ、保団連の本並省吾事務局次長は「問題は氷山の一角ではないか」と推察し、「全被保険者を対象とした調査を行うべきだ」と指摘する。

患者や医療機関の間では、2024年秋に予定されている保険証の廃止への不安感が高まっている。そのことを物語るのが、厚労省が9月29日の医療保険部会で示したマイナカードの利用状況の不振だ。

トラブル多発を契機に、マイナ保険証の利用は減少に転じた(出所:厚生労働省)

マイナンバーカードは2023年10月15日時点で9648万枚が配付され、普及率は約76%に達している。その一方で、マイナ保険証の利用件数は5月の853万件をピークに、6、7、8月と月を追うごとに減少している。8月のマイナ保険証の利用率は全体の4.6%にとどまっている。

保険証廃止方針の見直しなど実情踏まえた対応を

その理由について、武見敬三厚労相は9月29日の会見で、「情報のひも付け誤りを受けた国民の不安や、医療現場においてトラブルが指摘されていること」などを挙げている。

だが、厚労省は2024年秋に予定される保険証の廃止方針は撤回せずに維持している。武見氏は「私自身が先頭に立って、国民の皆様が医療現場でマイナ保険証を1度、実際に使っていただけるような取り組みを積極的に進めてまいりたい」と述べている。

こうした厚労省の方針に対して、多くの医療機関が保険証の廃止に危機感を抱いている。前出の保団連のアンケート結果によれば、回答した医療機関7070のうち、「保険証を残す必要がある」と答えた医療機関は6205、全回答数の87%に上った。

「今でこそ、ほとんどの患者さんは紙の保険証を持参している。マイナ保険証でトラブルがあった場合でも、紙の保険証で正確な情報を確認できる。2024年の秋以降、紙の保険証が廃止されてしまうとそれができなくなる。紙の保険証はぜひとも残してほしい」(ふたわ診療所の近藤氏)

厚労省は患者や医療機関の実情を踏まえ、拙速な保険証廃止は避けるべきだ。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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