日本の583系も展示、動き出す台湾「鉄道博物館」 JR東から譲渡受け所蔵車に、2027年開業目指す
その逆、つまり台湾製で海外に輸出された車両もある。今回の展示車両で異彩を放っていたのは「タイ語」が書かれた車両。1965年にタイ国鉄向けとして100両が台北機廠で製造された「BV.15000型」と呼ばれる車掌車だ。当時、台北機廠ではコスト削減や車両技術の向上を目的として自国製の非動力車両を製造しており、初めて海外に輸出したマイルストーン的な存在である。
まだ経済力が低く、輸入に頼っていた台湾の工業力の成長を表すものであるとともに、歴史や政治的に関係の深いタイと53万米ドルの交易額を生んだ、そのパートナーシップの象徴なのだ。すでに多くの車両が廃車となった中で、2018年にタイ国鉄の協力の元、車両を探し当て逆輸入する形で里帰りし、展示が実現した。
文化部はこのようなラインナップを単なる「点」の展示ではなく、それらを繋ぎ合わせた「線」と「面」の展示だと表現する。寄せ集めではなく、文化と融合したストーリーを持った車両を間近で見られること、自給自足の修復・整備力を持ち動態保存まで行うリアルさが他所では見られない点と言えよう。
「鉄道員の生活文化」を展示する
展示品目は鉄道車両そのものだけではない。台北機廠で働いていた鉄道員の生活も文化として展示されている。
目玉は大浴場だ。汗や油まみれの鉄道員の疲れを癒やしてきた施設は当時、福利厚生として最先端であった。天井や浴槽に円形を多く取り入れつつも、トラス形状を取り入れた更衣室や操業用ボイラーの余熱を利用した加熱システムなど、美しさと機能性を両立させたモダニズム建築は「台湾のローマ風呂」とも称され、評価が高い。実際、2000年に当施設内の建築物として最も早く市の遺跡に指定されるとともに、人気俳優のJay Chou(ジェイ・チョウ、周杰倫)や欧米の監督による映画やMVのロケ地ともなっている。
今回の展示に合わせ内装の修復が進められ、あえて当時の割れ目の残る床やロッカーを一部に残す工夫がなされたほか、蒸気を模した演出や、汚れた服、水滴の音を放つスピーカーを設置するなど、車両と同じく長い歴史の過程を再現した。実際に、訪れた元鉄道員の男性は「ああ、この音!」と驚きを隠しきれなかったという。
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