熱狂からわずか1年、漂流するモディノミクス あっさり剥がれた"ヒーロー"の化けの皮

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さらに、かつては投資家を引き付け、主要産業の成長を促進するには欠かせないと考えられていた労働市場の自由化については、棚上げとなってしまっている。楽観的に語られていた改革については、「インクリメンタリズム(漸増主義)」の尊重という、正式に打ち出された「イズム」に取って代わられてしまった。

壮大な構想を発表しながらも、それに予算を充てられない、という事態も起きている。だが、それより悪いのは、教育や公衆衛生、保健、女性の安全対策に対する予算は(BJPの選挙キャンペーンの最大の売りだったにもかかわらず)すべてカットされてしまった。

評価を下げた「あのスーツ」

こうした事態を国民はすべてお見通しだ。特にインドの農民はこれに対して憤慨している。前政府で成立した土地収用法が、強引とも言える一連の修正により骨抜きにされてしまったからだ。

一般的な国民も、国民に尽くすことを約束したモディが、いまや派手な服装をしてほかの有名人たちと酒を酌み交わすようなどこにでもいるセレブへの転身に感心はしていない。

とりわけ、今年1月に米オバマ大統領がインドを訪問したとき、モディが自らの名前がストライプ一本一本に縫い込まれたスーツを着用していたことに対する評価は厳しい。この見せ物に愕然とした国民は、デリー州議会選挙において早速BJPに恥をかかせた。1年前は圧勝していたデリーで、今度は野党が立ち直りつつあるのだ。

モディはある意味では運がいいと言える。短期間で自らの政権の欠陥がここまで明らかになったのだから。あとはその欠陥に対処するだけでいい。その時間はある。例のストライプのスーツを急いでチャリティ用オークションに出したことを考えても、学習能力はあるようだ。しかし残念ながら、残りの「間違い」はそう簡単に修正できるものではないが。

(c)Project Syndicate

シャーシー・タロール インド国民会議派議員、元国連事務次長
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