ドコモはなぜ、「dポイント」移行を急ぐのか ポイントが「使われない」ことに潜む問題点
消費者が貯めたポイントは、いったいどういう存在なのだろう? 使っていなければ単なる点数に見えるが、いつでも商品やサービスに引き換えられるわけで、一種の資産とみなすことができる。
ということは、企業内に蓄積されたポイントは、企業が顧客から預かっている資産、もしくは「顧客がその企業に支払う可能性を留保した資産」ということもできる。もし企業側の施策によってポイントが消失するようなことが起きれば、消費者保護上は大きな問題だ。また、税務処理も当然必要となる。
そのため、内部で預かっているポイントが相当する金額に応じて、引当金を割り当てるのだが、問題は、それを「いつ」引き当てるのか、といった問題が生まれることだ。日本ではポイントの発行時ではなく、利用時に会計処理をすることが一般的だが、それが続いた結果、企業の内部には大量の「使われていないポイント」が残る。
巨額のポイントが残ると、それはそれでリスク
ポイントは、使われると損になるのであまり使って欲しくない、という部分があるものの、あまりに巨額のポイントが残っていると、それはそれで経営上の大きなリスクとなる。
そこで大きな悩みを抱えていたのが、携帯電話事業者だ。顧客引き留めのためにポイントサービスを展開してきたものの、携帯電話事業者のポイントは、家電量販店やコンピニのポイントと違い、用途が狭かった。いつのまにか内部には多額のポイントが蓄積され、2010年頃までに、NTTドコモとKDDIは、圧倒的に多額の引当金額を用意しなければいけない企業になってしまった。
概算だが、筆者の手元にある2011年のデータでは、NTTドコモはビックカメラの10倍の引当金額となる、1700億円規模に膨らんでいた。万が一、これが一気に出て行くことになればリスクだし、国際財務報告基準(IFRS)では「ポイント発行時に引き当て」となっている。ルールの変化に伴い、業績に大きなリスクが生まれる。
これを解消するにはどうしたらいいか? ポイントを集める行為はそのままに、「適切に使ってもらう」形へと変化させていく必要があったのだ。ポイントがストックでなくフローになれば、リスクは軽減される。
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