国が控訴「水俣病訴訟」本質は食中毒事件の新見解 環境省は「科学ではない」と大阪判決を問題視

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9月27日に大阪地裁による勝訴判決を手にした原告は、特措法による救済措置に申請して「非該当」とされた人と申請期限までに申請できなかった人からなる。判決は原告全員が水俣病にかかっていると認定し、国やチッソに損害賠償金の支払いを命じた。

特措法は対象地域を定めている。判決は、その地域外に住む人でも魚をたくさん食べ、かつ、手足の先の感覚が鈍いなどの感覚障害があれば、魚介類に蓄積されたメチル水銀化合物に暴露されたことを認めた。

また時期についても、水俣湾に仕切り網を設け、不知火海を回遊する魚が汚染海域に入ってこないようにした1974年1月までは、不知火海一帯で採れた魚がメチル水銀化合物の汚染魚だった可能性があり、この時期に魚を多く食べた人は汚染物質に暴露したと考えた。

裁判では疫学の調査と研究が大きな役割を果たした。疫学とは、人の集団にみられる疾病の症状や発生原因を明らかにするもので、対照的な集団との比較を行い、調査分析を進める。

水俣港に設けられた仕切り網の位置(1977年10月1日現在、平成18年版環境白書から)

判決に影響を及ぼした研究者の分析と見解

「水俣病は魚介類に蓄積されたメチル水銀による食中毒症です」「認定審査を行う医師らが中毒症の診断方法を知らないために誤診を重ねて来た」。5日、オンラインでメディア向け説明を行った岡山大学大学院環境生命科学研究科の津田敏秀教授(65)は、こう断言した。

大阪地裁の判決は、意見書を提出した津田教授の分析と見解を重要視。判決要旨にも「相当高い信頼性が認められ、明らかな疫学的因果関係を示すといえる」「法的因果関係を判断する上で重要な基礎資料となるというべきである」と記述されている。

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