心臓病の最終段階、じわじわ襲う「心不全」の怖さ 心筋梗塞や狭心症は「治療すれば安心」ではない
心不全については、日本循環器学会と日本心不全学会が「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義している。
心不全は心臓血管病の最終段階
原因はさまざまで、心臓の血管(冠動脈)が詰まったり狭くなったりする心筋梗塞や狭心症、高血圧、心臓の血液が一方向に流れるためにある弁の機能が低下する弁膜症、脈のリズムが一定でなくなる不整脈、心臓の筋肉の機能が低下する心筋症などがきっかけで発症する。
このほか、加齢による心臓の機能低下も要因の1つだ。
横井氏は、「臨床の現場では間違いなく心不全の患者さんが増えていて、それが心不全パンデミックを想起させている」と指摘する。
その背景にあるのは、皮肉にも心臓病治療の発展にあるという。
心臓をはじめとした循環器医療はこの30年間で急速に進歩し、心血管インターベンション(脚の付け根や腕、手首などの血管から、医療用の細く柔らかいチューブを差し込んで行う治療)も普及。薬の進歩も著しい。そのおかげで、急性期で亡くならずに乗り切った患者は大勢いる。
「ただ、そういう人たちは病気が治ったとしても、心臓の機能は完全には元の状態に戻らない。つまり、こうした心機能が悪い患者さんが出てきていることが、心不全患者の急増につながっている」 (横井氏)
心不全はリスクと進行状態によってステージが分かれている。以下の急性・慢性心不全診療ガイドラインから一部抜粋したグラフは、アメリカ心臓病学会財団(ACCF)とアメリカ心臓協会(AHA)※のステージ分類がベースになっている。
※ACCF/AHA:アメリカ心臓病学会財団/アメリカ心臓協会
(American College of Cardiology Foundation/American Heart Association)
「肺に水が溜まって息苦しくなり、酸素吸入が必要になると入院治療が必要になる。このようなステージC以上がいわゆる心不全であり、ここまできてしまうと改善するのが難しくなる。本来は、入院になる前のステージB、できればステージAの段階で、治療を開始することが重要」(横井氏)
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