「ペヤング事件」とは、いったい何だったのか

0.00025%の確率が問い掛けた教訓

まるか食品は現金商売を基本とし、原材料からCM費用まで現金で支払い、無借金経営を続けた。本社工場も1985年にみずからの資金だけを頼りにし、かつ、リスクヘッジを何重にも重ねた。そのレベルは通常を超え、1990年代には不動産の家賃収入で従業員の給与をまかなう計画を立てたほどだ。ペヤングの異物混入時にも、ただちに従業員の雇用を守ることを宣言し、徹底した品質改善のため生産工程と生産設備を刷新する決断を行えたのも、このような”体質”があった。

信用調査会社の調べや複数社の報道などを総合すると、まるか食品の売上高は約80億円で、純利益が売上高の10%以上を占めるという超優良企業で、従業員数は100人程度とみられる。

そのような堅実メーカーが今回の事件を受け、工場ならびに工程を改善した策はざっと次のとおりだ。

・出入口にエアーシャワーを増設した
・床のくぼみをなくしホコリがたまらないようにした
・床と壁を貼り替えた
・虫が闖入しないように穴、隙間を徹底的にふさいだ
・工程横にカメラを増設し、異物混入チェックを強化した
・中身の異物混入をチェックする監査カメラを設置した
・品質管理スタッフを増強した

 

商品自体も、容器をシール式にし、密閉形態にするなどの改善策を施した。ただし、まるか食品はゴキブリが入り込んだ経路は、わからなかったとしている。これは正直だともいえるし、それだけ食品製造業における要因特定の困難さを示す。ゴキブリは高温加熱処理されていたようで、それがヒントになると思われたものの、破片が小さすぎて油の種類が同一だったのかが判断できなかった。また、容器と包装にも穴はなかったと確認されている。

消費者と生産者への2つの教訓

まるか食品は一部の生産ラインに限定して24時間生産を再開する。目標は1日あたり25万食の生産だという。ただ食品流通では、小売店の棚を切らさせないのが重要だ。すぐさまペヤングが小売店の棚に陳列されていくかは見守るしかない。

ペヤング問題について、一部では消費者の投稿内容について疑う意見を取る人たちがいる。私はその立場を取らないし、取れない。その可能性を証明できないためだ。

そこで製造工程で異物混入が起きたとの前提に立って、教訓を2つ挙げたい。1つめは消費者としての教訓、2つ目は生産者としての教訓だ。

①消費者としての教訓

おそらく私たち日本の消費者は、「食の安全」を信じ、100%の絶対的な安全と品質を求める。しかし、残念なことに現実には異物混入は100%防げない。

次ページ消費者側にも防御策は必要
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